平成29年(ネ受)第173号

駐車場利用細則無効確認請求上告受理申立て事件

申立人(一審原告) 若林昭夫

相手方(一審被告) 春日居ライフピアマンション管理組合法人

上告受理申立て理由書

平成29年4月26日 

最高裁判所 御中

申立人 若林昭夫 印  

 頭書事件について、申立人は、下記の通り上告受理申立て理由を提出する。

【理由要旨】

第1 区分所有法31条の解釈誤り


 原審の判断が参照に挙げた最高裁判例は規約の変更を行い、細則で料金設定したが、本件は規約の設定・変更はなく、細則で有料化を行ったもので事案が全く異なる。非合法な有料化により受ける掲記条項の不利益は絶対に受忍できない不利益である。

第2 区分所有法17条1項適用の解釈誤り


 国税庁は、マンション空き駐車場の外部貸しにつき、新たな区分所有者の使用が妨げられる場合は全体を収益事業と判定する。本件細則は無料且つ共済的事業から駐車場業へ「形状又は効用の著しい変更」である。駐車場を駐車場(駐車スペース)として使用する点では変わりがないとの原審の判断は甚だしい解釈誤りである。

第3 民法第135条【期限到来の効果】の解釈誤り


 使用申込の受け付け開始は「申込せよ」との法律行為の履行の請求であり、それに先立ち、11月8日開催の臨時総会で完全施行したと甲第8号証p2の3行以下に宣言している。施行日前に施行した本件細則は無効である。

第4 民法90条【公序良俗】の適用解釈の誤り

 賃貸業を営む区分所有者は賃借人等を自分の手足として使い何台でも駐車場を使用できるとの原審の判断は公序良俗に反する。駐車場不足の原因は被控訴人のかかる公序良俗に反する考えによる。

 規約16条2項の「・・・共用部分等(駐車場を除く)」の意味は「駐車場を除く共用部分等」であり、規約15条について何も述べてはいない。規約15条の主文は「区分所有者は(駐車場を)使用することができる」であり、賃借人等区分所有権を有さない者は主文の範囲外である。勝手に文言を付加したり、一部の語句だけ切り出し拡大解釈するのは日本語の冒涜であり公序良俗に反する。


【理由本文】

  以下において、上告人を控訴人、被上告人を被控訴人と呼ぶ。

第1 区分所有法31条の解釈誤り


 争点(3)の原審の判断p18の12行に最高裁平成8年(オ)第258号同10年10月30日第二小法廷判決・民集52巻7号1604頁の判例を挙げて控訴人の主張を退けるが、本件控訴事件とは前提事項が全く異なる。判例では、専用使用権の分譲を受け、小額ながら月極料金も払い、規約にも定められている。他の区分所有者は外部駐車場を借りていて、負担の公平化のために規約を改正した後、細則で料金改正した。本件事案は、新細則が区分所有者でない居住者に使用を認めることで明らかなように、賃借人等の使用により駐車場不足となり、外部駐車場の借り上げが必要となった。その費用の捻出のために、毎日使用する居住区分所有者が原因と責任転嫁し、同法19条、30条に違反して規約を設定・変更することなく、少数者の居住区分所有者を有料とした。
 掲記条項の後段の規定を類推適用するには、前段が類推適用できなければならない。判例の場合は、専用使用権の変更等の規約の設定・変更はあるが、料金額の設定は細則による点が不利益の算定に不備である。しかし、前段は掲記条項と類似と判断でき、料金について後段を類推適用した審理が必要とする。本件事案は、細則で有料化したもので、規約の設定・変更はないから掲記条項の適用はないが、少数者の権利の保護の観点から後段を類推適用するも、不利益は受忍の限度であるので控訴人の承諾は不要であり、細則での有料化は合法と原審の判断は結論する。
 このような解釈・論理が認められるなら、集会決議を経ることなく有料化細則を制定しても有効となる。これが不合理であることは明白である。この解釈・論理の誤りの原因は、前段の類似・合法を不要としていること、又は、不利益を料金に限定することにある。非合法な行為により受ける不利益は絶対に受忍できない不利益である。原審の判断は掲記法条及び判例の重大な解釈の誤りである。

第2 区分所有法17条1項適用の解釈誤り


 争点(4)の原審の判断p22下から10行目以下に規約47条3項2の適用につき「本件駐車場を有料部分と無料部分に分け、有料部分を固定制にする等の変更をするにとどまり、本件駐車場を駐車スペースとして用いるという点では変わりがないから、機能や用途に変更があるとはいえない」とあるが、スペースは日本語で場所であり「本件駐車場を駐車場として用いるという点では変わりがない・・・」即ち「駐車場以外に用いるのでなければ、機能や用途に変更があるとはいえない」との判断である。これは規約同条項のみならず、区分所有法17条1項適用の甚だしい歪曲解釈である。
 建物を支持する機能・用途を持つ土地を狭義で敷地と呼び、車を置く機能・用途を持つ土地を駐車場と呼ぶ。駐車場は土地の機能・用途であり、駐車場の機能・用途ではない。駐車場の機能・用途とは平積み、屋根付き、機械式立体、自走式立体、有料、無料、共済的使用、駐車場業使用等を言う。
 甲第11号証及びその要旨である上告理由書の第1【事案の概要及び前提事実】の3に述べるように、本件使用細則は区分所有者とそれ以外の者の使用を区別しないから、国税庁の判定は、駐車場全体が共済的事業から収益事業たる駐車場業への変更である。リゾート者無料の扱いは、個人事業主の自家消費に相当する収入、即ち、上告理由書の第1【事案の概要及び前提事実】の4に記載した月極料金又は日割料金収入が有るとして計上しなければならない。これ等の申告を行っていない本件駐車場業は脱税事業である。
 これは無料且つ共済的事業である駐車場の「形状又は効用の著しい変更」であり、規約の変更なく過半数の多数での有料化を是とする原審の判断は規約47条3項2及び区分所有法21条で準用する同法17条1項の適用事項に関する重大な解釈の誤りである。

第3 民法第135条【期限到来の効果】の解釈誤り


 争点(5)の原審の判断p28の2行目以下に、39期細則の施行日は平成28年1月1日であるところ、平成27年11月16日から本件駐車場の使用申込を受け付けているが・・・施行日前から準備行為をしたからといって39期細則が無効になると解さねばならない理由はないとあるが、民法第135条の解釈の重大な誤りである。同条は「法律行為の履行は期限の到来まで請求できない」であり、申込の受け付けは「申込をせよ」との法律行為の履行請求である。更に、申込の受け付けは同月30日に締め切った。以後は申込できず、これは法律行為の完全履行である。
 甲第8号証p2の3行以下には「第39期第1回臨時総会(平成27年11月8日開催)において、駐車場利用細則が承認されました。それにより旧細則は廃止され、平成24年8月18日施行の駐車場使用の許可の決定及び駐車許可証は全て無効となりました。それを受けて、全区分所有者の皆様に駐車場使用申込書を送付し、11月30日を期限として、申込の受け付けを行いました。その後、理事会において駐車場使用申込書、添付書類の内容審査を行い、有料駐車場使用者を選定致しました」と完全施行宣言している。施行日前に施行した39期細則は無効である。被控訴人代表者は税理士事務所を営む税理士であり、掲記の民法条項を知らない筈がない。

第4 民法90条【公序良俗】の適用解釈の誤り

 同争点の原審の判断p25の6行目以下に「区分所有者が賃借人等の区分所有権を有さない居住者を通じて間接的に駐車場を使用することができる」とあるが、主語は「区分所有者」目的語+述語は「駐車場を使用する」方法は「賃借人等を自分の手足として使い」である。戦時中、国民は天皇の手足として扱われたのと同じ思想であり、公序良俗に反する。賃貸事業を営む区分所有者は一人で複数台使用できる主張のようであるが、規約は認めていない。かかる詭弁により駐車場不足を捏造し、その解消責任と義務を少数者の居住区分所有者に転嫁した本件使用細則は公序良俗に反する。

 同争点の原審の判断p25の14行に「規約16条2項において敷地及び共用部分から本件駐車場が除かれているのは、規約15条で本件駐車場の使用については使用細則の定めるところによるとされているからであることは明らか」とあるが甚だしき日本語の歪曲解釈である。規約16条2項のその部分は「・・・共用部分等(駐車場を除く)」であり、この意味は「駐車場を除く共用部分等」である。規約15条については何も述べてはいない。勝手に文言を付加して日本語及び条項を解釈するのは公序良俗に反する。
 規約15条は「区分所有者は、駐車場の使用について、別に定める使用細則の定めるところにより、使用することができる」で、この主文は「区分所有者は(駐車場を)使用することができる」であり、賃借人等区分所有権を有さない者は主文の範囲外である。使用手続きは「別に定める使用細則の定めるところにより」で、その内容は「駐車場の使用について」即ち、主文についての細かな手続きである。規約事項については何の定めもない。原審の判断は「別に定める使用細則の定めるところにより」だけを切り出してこの文は何でも細則で定めることができるとするものである。勝手に文言を付加したり、一部の語句だけ切り出し拡大解釈するのは日本語の冒涜であり公序良俗に反する。かかる規約を歪曲解釈した内容の使用細則は公序良俗に反する。

第5 結語


 以上の如く、本件申立て理由は法令の解釈に関する重要な事項を含むので、上告理由として受理されるべきである。


附属書類

 上告受理申立て書副本

 7通

 

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