1
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本件は、被控訴人の管理する春日居ライフピアマンション (以下「本件マンション」という。) に居住する区分所有者であり、本件マンション駐車場 (以下「本件駐車場」という。) を使用していた控訴人が、被控訴人に対し、第38期通常総会において第3号議案として決議された駐車場利用細則 (以下「第38期細則」という。) 及び第39期第1回臨時総会において第1号議案として決議された駐車場利用細則 (以下「39期細則」という。) は建物の区分所有等に関する法律 (以下「区分所有法」という。) に違反し無効であるなどと主張し、38期細則及び39期細則がいずれも無効であることの確認を求める事案である。
原判決が、38期細則が無効であることの確認を求める訴えを却下し、控訴人のその余の請求を棄却したところ,控訴人が、これを不服として本件控訴をした。
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2
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前提事実 (争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
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(1)
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当事者等
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ア
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控訴人は、本件マンションに居住する本件マンションの区分所有者であり、本件駐車場を使用していた。
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イ
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被控訴人は、本件マンションの建物、敷地及び付属施設の管理を目的として、本件マンションの区分所有者全員をもって構成される管理組合法人である。
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(2)
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本件マンション及び本件駐車場の使用者
本件マンションの区分所有者には、行楽時などに短期滞在することを目的とする者 (以下「リゾート利用者」という。) と、生活の本拠として居住することを目的とする者 (以下「区分所有権を有する居住者」という。なお、以下においては、本件マンションを生活の本拠とする者のうち区分所有権を有しない者を「区分所有権を有しない居住者」といい、区分所有権を有する居住者と区分所有権を有しない居住者を併せて「居住者」という。) がいる。リゾート利用者と区分所有権を有する居住者が負担する管理費の額に違いはない。
平成27年11月8日当時の区分所有者総数は376名であり、本件駐車場の駐車可能台数は105台であった (乙15)。
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(3)
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管理規約 (乙1)
平成21年8月24日から施行されている春日居ライフピアマンション管理規約 (以下「管理規約」という。) 15条は、「区分所有者は、管理組合法人が管理する駐車場・・・の使用について、別に定める使用細則の定めるところにより、使用することができる。」と規定している。
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(4)
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使用細則の改定
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ア
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従前の細則 (乙2)
平成24年8月18日に開催された被控訴人の第35期通常総会において、「春日居ライフピアマンションの使用及び共同生活の秩序維持に関する細則」の「第5章 駐車場の使用 (20条〜26条)」の改訂案が第3号議案として提出され、可決された (乙4) 。改訂された上記細則 (乙2。以下「旧使用細則」という。) では、従前どおり本件駐車場は無料であった。
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イ
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第38期通常総会決議による改定 (乙6,10)
平成27年8月29日に開催された被控訴人の第38期通常総会において、別紙1記載の「春日居ライフピアマンション管理組合法人駐車場利用細則 (案) 」 (乙6・19〜21頁) が第3号議案として提出され、237名 (出席者72名、委任状提出者67名、書面又は代理人による議決権行使者98名)
中賛成者201名の賛成多数で可決され (以下、この決議を「38期決議」という。) 、38期細則が成立した。38期細則は、その附則により、平成28年1月1日から施行するものとされ、また、これに伴い旧使用細則の「第5章 駐車場の使用
(第20〜26条) は廃止するものとされた。
38期細則は、本件駐車場の使用について、概要、次のように規定していた (乙6) 。
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(ア)
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共有地内の駐車施設を有料駐車場として扱う (1条)。
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(イ)
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有料駐車場の利用車は、「組合員又は居住者」の所有する車に限るものとし、利用台数は1戸に1台限りとする (2条1項。なお、上記「居住者」は区分所有権を有しない居住者を指すと解される。)。
駐車場を利用できる自動車は、乗用車又は貨物兼用乗用車とする。(2条2項)
1か月に16日未満の駐車の場合は、その期間の駐車場使用料金は無料扱いとする (2条3項)。
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(ウ)
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有料駐車場の使用者は、被控訴人と自動車駐車契約を締結する (5条1項)。
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(エ)
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駐車区画は、先着優先、自由選択制とする (8条1項)。
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ウ
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第39期臨時総会決議による改定 (乙7,15)
平成27年11月8日に開催された被控訴人の第39期臨時総会において、第38期通常総会で出された要望・意見を踏まえて、38期細則の見直しを行ったとして、別紙2記載の「駐車場利用細則 (案)」 (乙7・3〜6頁) が第1号議案として提出され、245名 (出席者47名、委任状提出者26名、書面又は代理人による議決権行使者172名)
中賛成者191名の賛成多数で可決され (以下、この決議を「39期決議」という。) 、39期細則が成立した。39期細則は、その附則により、平成28年1月1日から施行するものとされ、また、旧使用細則の「第5章 駐車場の利用」等は廃止とするものとされた。
39期細則は、本件駐車場の使用について、概要、次のように規定している (乙3) 。
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(ア)
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共有地内の駐車施設を有料駐車場と無料駐車場に区別する (1条) 。
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(イ)
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有料駐車場については、「組合員又は居住者」 (原則として本件マンションに住民登録している者) が所有し、かつ、使用する車両であって、買物、通勤など日常生活に必要な車両であることを使用許可条件とする
(3条。なお、上記「居住者」は区分所有権を有しない居住者を指すと解される。) 。
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(ウ)
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無料駐車場については、居住期間が1か月に16日未満で、その間に駐車場を利用する者の車両であることを使用許可条件とする (4条) 。
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(エ)
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有料駐車場の使用は、指定された区画に駐車する固定制とする (10条1項)
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(オ)
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有料駐車場の使用料は、理事会が定める (11条) 。
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エ
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有料駐車場の使用料
有料駐車場の使用料は、理事会で月額2000円と定められた。
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3
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争点
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(1)
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細則によって本件駐車場を有料化することは、区分所有法30条1項に違反するか。
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(2)
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規約ではなく細則により、本件駐車場の使用頻度によって本件駐車場の料金を有料と無料に分けることは、区分所有法19条等に違反するか。
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(3)
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本件駐車場を有料化する細則の変更が、控訴人の権利に「特別の影響を及ぼすべきときに」 (区分所有法31条1項後段) に該当し、控訴人の承諾が必要となるか。
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(4)
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39期細則に固有の無効事由があるか。
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(5)
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38期細則及び39期細則 (以下「本件各細則」という。) が公序良俗に反するか。
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4
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争点に関する当事者の主張の要旨
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(1)
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細則によって本件駐車場を有料化することは、区分所有法30条1項に違反するか (争点(1))。
(控訴人の主張)
区分所有法30条1項は、駐車場等の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項を規約事項としているから、従来無料であった本件駐車場を有料化するには規約の変更が必要であり、細則で本件駐車場を有料化することは同項に違反し、本件各細則は無効である。
(被控訴人の主張)
区分所有法30条1項は、付属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項について、「規約で定めることができる」と規定し、規約で定めなければならないとはしていない。
そして、管理規約15条は、「区分所有者は、管理組合法人が管理する駐車場・・・の使用について、別に定める使用細則の定めるところにより、使用することができる。」としており、本件駐車場の使用については、細則で規定することとされている。そして、使用細則の制定、変更又は廃止は、集会の普通決議事項とされている (管理規約48条4号、47条1項、2項)。
したがって、細則によって本件駐車場を有料化することは、区分所有法30条1項に反するものではない。
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(2)
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規約ではなく細則により、本件駐車場の使用頻度によって本件駐車場の料金を有料と無料に分けることは、区分所有法19条等に違反するか (争点(2))。
(控訴人の主張)
本件駐車場から受ける利益は本件駐車場を利用することであり、使用料はその利益に対する対価として支払うのであるから、本件駐車場の使用料は区分所有法19条の「共用部分の負担」に該当し、管理規約には同条の原則を変更する定めはないから、本件駐車場の使用料は区分所有者が共有持分の割合に従ってこれを負担すべきであるところ、本件各細則は、規約によることなく、本件駐車場の使用頻度によって本件駐車場の料金を有料と無料とに分けているから、本件各細則は同条に違反する。また、本件各細則は、管理費等の額について各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出するものとする管理規約25条2項にも違反する。したがって、本件各細則は無効である。
(被控訴人の主張)
区分所有法19条は、共用部分の費用負担や利益収取について区分所有者の内部自治に委ね得る性質の事項と捉え、規約に別段の定めがあればそれに従い、規約に定めがない場合には、共有持分に応じて負担、収取をする旨定めたものである。
管理規約は、本件駐車場の使用について使用細則の定めに委ねているから、細則を制定・変更することによって使用頻度に応じて使用料を負担させることができるのであり、負担額について持分割合に拘束されることはないから、本件各細則は同条に違反するものではなく、管理規約25条2項に違反するものでもない。
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(3)
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本件駐車場を有料化する細則の変更が、控訴人の権利に「特別の影響を及ぼすべきときに」 (区分所有法31条1項後段) に該当し、控訴人の承諾が必要となるか (争点(3))。
(控訴人の主張)
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ア
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規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない (区分所有法31条1項後段)。
本件駐車場の有料化は、リゾート利用者は使用料を一切負担せず、居住者が使用料を負担し、居住者のみが経済的不利益を受ける。そして、居住者は月額2000円の本件駐車場の使用料を負担し、他方、リゾート利用者は外部駐車場を利用すれば一日1000円を要し、これを1か月に最大15日利用すれば1万5000円を要するところ、無償で本件駐車場を使用することができるのであり、そうすると居住者が受ける不利益は1か月で最大1万7000円に及ぶことになるから、その不利益は居住者が受忍すべき限度を超えるものである。したがって、細則を変更して本件駐車場を有料化することは、区分所有権を有する居住者に「特別の影響を及ぼすべきとき」に当たるから、本件駐車場を有料化するためには、区分所有法31条1項後段により控訴人を含めた区分所有権を有する居住者全員の承諾が必要であるが、控訴人は上記承諾をしていないから、本件駐車場を有料化することはできず、本件各細則は無効である。
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イ
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被控訴人は、本件駐車場の有料化の必要性、合理性があると主張する。しかし、有料化の必要性があるというためには、その手段方法以外では解決できない事情がなければならない。
本件では、本件駐車場を不正に使用する区分所有権を有しない居住者が27名おり (第37期通常総会議案書に添付されたアンケートのうち、本件駐車場の使用料についてのアンケートの回答者数が、他のアンケートの回答者数よりも27名多く、これは本件駐車場を不正に使用する区分所有権を有しない居住者が回答したためである。) 、これらの者による使用を排除したり、本件マンションの庭を駐車場として使用したりすれば、駐車場の不足を解消することができる。したがって、本件駐車場を有料とする必要はない。
そして、必要のない有料化を行うことは合理性を欠くし、駐車場不足を解消するための手段としては、上記のとおり不正使用者の排除や庭の駐車場化などの方法が考えられるところ、本件駐車場の有料化は、最も合理性の低い方法である。
したがって、本件駐車場を有料化する必要はなく、駐車場不足を解消する手段としての合理性もない。
(被控訴人の主張)
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ア
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区分所有法31条1項後段は、「規約の変更」によることなく、規約の定めに基づいた集会決議によってマンション駐車場の使用料が変更された場合に類推適用される。そして、同項の「特別の影響を及ぼすべきとき」とは、規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、当該区分所有関係の実態に照らして、その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいう。
従来無償とされてきた専用使用権を有償化し、専用使用権者に使用料を支払わせることは、一般的に専用使用権者に不利益を及ぼすものであるが、有料化の必要性及び合理性が認められ、かつ、設定された使用料が当該区分所有関係において社会通念上相当な額であると認められる場合には、専用使用権者は専用使用権の有償化を受忍すべきであり、そのような有償化決議は専用使用権者の権利に「特別の影響を及ぼすべきとき」には該当しないというべきであるとされている。
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イ
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本件駐車場は、区分所有者の総数が376名であるのに対し、駐車区画は105台分しかなく、行楽時にはリゾート利用者が多数使用するため、本件駐車場の駐車区画だけでは足りなくなることが多々あった。そこで、外部の駐車場を借りて使用可能な駐車場を増やすこととし、その原資を得るため、本件駐車場を有料化する必要があった。
そこで、38期細則において、居住者については、本件駐車場の使用頻度が高く、利益を多く享受することから、使用料を支払うものとし、使用頻度の少ないリゾート利用者については、本件駐車場の使用を無料とすることにより、使用者間の公平を図ることとした。さらに、39期細則においては、有料駐車場について、駐車区画を固定制とすることにより、使用料を負担する居住者が確実に駐車スペースを確保することができるよう配慮し、使用者間の公平を図った。したがって、本件駐車場の有料化には合理性がある。
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ウ
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本件駐車場の使用料は、近隣のマンションの駐車場や有料駐車場の料金が月額3000円から5000円であることを考慮して、理事会で月額2000円と定められており、近隣の駐車場使用料と比較しても決して高額ではない。また、年額2万4000円という額であれば、居住者とリゾート利用者のバランスを失することにはならず、使用料の額も相当である。
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エ
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したがって、居住者の不利益が受忍すべき限度を超えるとは認められないから、区分所有権を有す居住者に「特別の影響を及ぼすべきとき」には該当しない。
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オ
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なお、控訴人は、被控訴人が実施したアンケートを根拠として本件駐車場を不正に使用している区分所有権を有しない居住者が27名存在するから、それらの者の使用を排除すれば駐車場の不足を解消することができると主張するが、そもそも上記アンケートは区分所有者のみを対象に行ったものであり、控訴人が問題とする回答者を上回る回答数は、複数の選択肢を選んだ者が27名いたことによるものにすぎないから、控訴人の上記主張はその前提を欠いているし、区分所有権を有しない居住者の本件駐車場の使用は不正使用ではないから、控訴人の上記主張は失当である。
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(4)
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39期細則に固有の無効事由があるか (争点(4))。
(控訴人の主張)
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ア
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管理規約47条3項2号によれば、敷地及び共用部分等を変更する場合においてその形状又は効用の著しい変更を伴うときは組合員総数及び議決権総数の各4分の3以上で決することが必要であるところ、本件駐車場を有料部分と無料部分に分けることは共用部分の効用の著しい変更に当たるから上記の方法による決議が必要であるにもかかわらず、39期決議は出席議決権の過半数のみで決議しているから、39期細則は同号に違反し無効である。
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イ
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総会の出席者は書面又は代理人により議決権を行使した者及び委任状を提出した者の議決や委任の状況を確認することができないから、それらの開示を拒否して行われた39期決議は無効である。
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ウ
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39期決議は、一事不再議の原則に反し、無効である。
(被控訴人の主張)
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ア
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39期細則は共用部分の管理に関する規定にすぎない。本件駐車場は、従前から駐車場として使用されてきたのであり、有料化されてもその効用に変化は生じないから、共用部分の効用の重大な変更に該当せず、集会の普通決議で決することができる (区分所有法18条1項)。
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イ
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控訴人の主張イは争う。
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ウ
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39期細則は、38期細則の改正案として提案され、適切に決議されたものであり、本件各細則は同一の内容ではない。細則の変更に控訴人が主張する一事不再議の原則が適用されるか否かはともかく、39期細則への変更は一事不再議の原則には反しない。
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(5)
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本件各細則が公序良俗に違反するか (争点(5))。
(控訴人の主張)
以下の理由から、本件各細則は、公序良俗に反し、無効である。
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ア
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38期細則は、本件駐車場の有料化に異議を唱える控訴人に本件駐車場を使用させないために、本件駐車場を使用することができる自動車を乗用車又は貨物兼用乗用車に限定し、控訴人の使用する軽トラックを排除しており、38期細則は控訴人を不当に差別しその人権を侵害するものであるから公序良俗に反しており、それに基礎を置く39期細則も公序良俗に反する。
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イ
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本件各細則は、被控訴人が区分所有者のうち多数を占めるリゾート利用者に本件駐車場の無料での使用を認めるという利益を与えて賛成するよう誘導して決議されたものであり、このような不当な決議により駐車場不足の解消に要する費用の負担が居住者に転嫁させられたから、本件各細則は公序良俗に反する。
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ウ
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39期細則2条は区分所有権を有しない居住者にも本件駐車場の使用を認めるが、それは、次のとおり管理規約15条及び16条2項に違反し、また、旧使用細則2条13号及び39期細則の他の規定 (5条及び14条2号) と矛盾するから、39期細則は公序良俗に反する。38期細則も同様である。
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(ア)
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管理規約15条は「区分所有者は、管理組合法人が管理する駐車場・・・の使用について、別に定める使用細則の定めるところにより、使用することができる。」と規定する一方、区分所有権を有しない居住者については何も規定しておらず、その反対解釈により区分所有権を有しない居住者は本件駐車場を使用できないと解されるから、39期細則2条は管理規約15条に違反する。
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(イ)
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管理規約16条2項は第三者に使用させることができる共用部分から本件駐車場を除外しており、この第三者とは区分所有権を有していないものを意味するから、39期細則2条は管理規約16条2項に違反する。
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(ウ)
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旧使用細則2条13号は「駐車場使用者」について「管理組合法人から許可証の交付を受けて駐車場を使用する区分所有者を言う。」と定義付けており、本件駐車場の使用細則が改正されても旧使用細則の第5章の内容が変わっただけで上記定義規定は適用されるから、39期細則2条は旧使用細則2条13号と矛盾する。
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(エ)
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39期細則5条は区分所有権を有しない者は駐車場使用の申し込みをすることができないと規定しているから、39期細則の2条は5条と矛盾する。
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(オ)
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39期細則14条2号は区分所有権を有しない者が駐車場を使用することを禁止している (管理規約15条は本件駐車場を使用することができるのは区分所有者であると規定しているし、管理規約16条2項及び19条においては区分所有権を有しない者を「第三者」としているから、39期細則14条2号においても「第三者」は区分所有権を有しないものと解すべきである。)
から、39期細則の2条は14条2号と矛盾する。
(被控訴人の主張)
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ア
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38期細則は、軽トラックの使用を禁じておらず、控訴人を排除する意図はないし、同細則は、施行される前に39期細則に改定されたため、38期細則の効力は発生していない。
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イ
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リゾート利用者と居住者の間には、本件駐車場の使用頻度に明らかな差があり、本件駐車場の使用によって受ける利益に応じて使用料の負担を定めることには合理性があるから、本件各細則は公序良俗に反しない。
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ウ
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以下のとおり、39期細則は管理規約に違反せず、また、旧使用規則や39期細則の他の規定との矛盾もない。
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(ア)
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管理規約15条は、区分所有者の使用を細則に委ねる規定であり、39期細則2条は、区分所有者が直接使用する場合のみならず、第三者である占有者を通じた間接的使用も認めたものであるから、39期細則2条は管理規約15条に違反しない。
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(イ)
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管理規約16条において敷地及び共用部分等から本件駐車場が除かれているのは、管理規約15条が本件駐車場の使用について全て使用細則に委任しているからであるから、39期細則2条は管理規約16条2項に違反しない。
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(ウ)
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旧使用細則2条13号は「駐車場使用者」についての定義規定であるが、39期細則の各規定でこれを適用ないし準用する条項はなく、両者は関係がないから、39期細則2条は旧使用細則2条13号と矛盾しない。
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(エ)
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39期細則5条は申し込み手続きの簡明化のため駐車場使用の申込みを行う者を区分所有者に限定したにすぎず、本件駐車場の使用者を区分所有者のみに限定する趣旨ではないから、39期細則の2条は5条と矛盾しない。
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(オ)
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39期細則14条2号の「第三者」は本件駐車場の使用を許可された組合員又は区分所有権を有しない居住者以外の者を意味するから、39期細則の2条は14条2号と矛盾しない。
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1
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39期細則が無効であることの確認を求める請求について検討する。
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(1)
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細則によって本件駐車場を有料化することは、区分所有法30条1項に違反するか (争点(1))
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ア
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控訴人は、従来無料であった本件駐車場を有料化するには区分所有法30条1項により規約の変更が必要であるから、細則によって本件駐車場を有料化することは同項に違反し無効であると主張するので、検討する。
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イ
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区分所有法30条1項は、「建物又はその敷地もしくは付属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる」としており、これは、区分所有者相互間の事項について広く規約で定めることを認め、区分所有者の団体による私的自治を認めた規定である。
そして、敷地内での駐車場の使用は、上記の区分所有者相互間の事項に該当するから、規約で定めることができる。
本件において、管理規約15条は、「区分所有者は、管理組合法人が管理する駐車場・・・の使用について、別に定める使用細則の定めるところにより、使用することができる。」と規定しており (前期前提事実2(3)) 、本件駐車場の使用については使用細則で定めることとしている。--[p14Last]
区分所有法30条1項が定める規約事項は、いわゆる任意的規約事項であって、専ら規約によって定めることのみが認められる必要的規約事項ではないから、規約において、別に定める使用細則の定めるところによるとして、使用細則に委任することは許容されると解される (控訴人は、同項は、区分所有者相互間の事項の定めを規約に委ねているが、細則については何も規定していないから、その反対解釈により同項は上記事項の定めを細則に委ねることを許容していないと主張するが、控訴人の上記主張は同項が定める規約事項が任意的規約事項であることを看過するものであり、採用することができない。)
。
したがって、細則によって本件駐車場を有料化することが同項に違反するということはできない。
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ウ
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よって、控訴人の上記アの主張は採用することができない。
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(2)
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規約ではなく細則により、本件駐車場の使用頻度によって本件駐車場の料金を有料と無料に分けることは、区分所有法19条等に違反するか (争点(2))
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ア
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控訴人は、本件駐車場から受ける利益は本件駐車場を使用することであり、使用料はその利益に対する対価として支払うのであるから、本件駐車場の使用料は区分所有法19条の「共用部分の負担」に該当し、管理規約には同条の原則を変更する定めはないから、本件駐車場の使用料は区分所有者が共有持分の割合に従ってこれを負担すべきであるところ、39期細則は、規約によることなく、本件駐車場の使用頻度によって本件駐車場の料金を有料と無料に分けているから同条に違反すると主張する。
しかしながら、「共用部分」とは専有部分以外の部分、専有部分に属しない建物の附属物及び同法4条2項の規定により共用部分とされた附属の建物をいう (同法2条4項) から、本件駐車場は「共用部分には当たらない。ただし、本件駐車場は、同条5項、同法5条1項、管理規約4条・別表第1により、「建物の敷地」の一部であるとともに「共用部分以外の附属施設」に当たり、かつ、本件マンションの区分所有者の共有に属するものであるから、同法21条の適用があり、控訴人の主張する点が同条において準用する同法19条に違反するか否かが問題となるので、検討する。
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イ
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同法19条は、各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する旨規定するところ、これは、共用部分については、管理のための費用その他の負担が生じることもあるし、そこから利益を生じることもあることから、こうした共用部分の負担及び利益の帰属について定めた規定である。そうすると、同条にいう「共用部分の負担」とは、共用部分に当たる部分の保全・管理などに伴い発生する費用及び租税等の負担、すなわち、通常、管理費として観念される債務をいうものと解するのが相当である。したがって、同条を準用する同法21条所定の区分所有者の共有に属する建物の敷地又は共用部分以外の附属施設の負担についても、これと同様に当該敷地又は附属施設の保存・管理などに伴い発生する費用及び租税等の負担をいうものと解するのが相当である。しかるに、本件駐車場の使用料は、本件駐車場を使用することにより生じるものであって、本件駐車場の保存・管理などに伴い発生する費用及び租税等の負担に当たるとはいえないから、管理規約に別段の定めがなかったとしても、当然に本件駐車場を共有する各区分所有者がその持分の割合に応じて負担に任じることになるものではない (なお、仮に控訴人が主張するように本件駐車場の使用料について同法21条において準用する同法19条が適用されると解するならば、本件駐車場を使用しない区分所有者まで本件駐車場の使用料を持分に応じて負担しなければならないことになるが、これが不合理であることは明らかである。)。--[p16Last]
むしろ、本件駐車場の使用料に関する事項は、建物の敷地又は附属施設の使用に関する区分所有者相互間の事項に当たるから、同法30条1項が適用されるところ、同項が定める規約事項はいわゆる任意的規約事項であり、規約において細則に委任することが許容されると解されることは前記 (1) に説示したとおりである。
したがって、規約によることなく細則により使用頻度によって本件駐車場の料金を有料と無料に分けることが同法21条において準用する同法19条に違反するということはできない (なお、控訴人は上記のような判断は当事者の申し立てない事項について判断するものであり不当であると主張するので付言するが、上記説示は控訴人の主張する請求原因事実
(ここでは同条の規律に服すること) が認められないことを述べるものであるところ、請求原因事実等の要件事実の存在を否定する判断は相手方当事者が主張する理由で行わなければならないものではないから、控訴人の上記主張は失当である。)
。--[p17L14]
また、管理規約25条2項は、同条1項に規定された管理費および修繕積立金の額について定めたものであるところ、本件駐車場の使用料はこれらに当たらないから、使用頻度によって本件駐車場の料金を有料と無料に分けることが管理規約25条2項に反するものではない。
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ウ
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したがって、控訴人の上記アの主張は採用することができない。
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(3)
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本件駐車場を有料化する細則の変更が、控訴人の権利に「特別の影響を及ぼすべきときに」 (区分所有法31条1項後段) に該当し、控訴人の承諾が必要となるか (争点(3))
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ア
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控訴人は、細則を変更して本件駐車場を有料化することは、区分所有権を有する居住者に「特別の影響を及ぼすべきとき」に当たるから、控訴人の承諾が必要であると主張するので、検討する。--[p18L-2]
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イ
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本件では、細則の変更により、従前無料であった本件駐車場の使用が一部有料化されたものであるから、「規約の設定、変更又は廃止」 (区分所有法31条1項後段) には当たらない。
しかしながら、同項後段が、多数者の意思によって少数者の権利が制限又は否定されるという結果が生じる場合に、少数者の権利の保護の観点から、「特別の影響を及ぼすべきとき」には当該少数者の承諾を要するとしていることに鑑みると、細則の定めにより少数者の権利を制限又は否定する場合には、当該少数者の権利の保護の観点から、同項後段を類推適用し、区分所有者間の利害を調整するのが相当である。そして、「特別の影響を及ぼすべきとき」に当たるかは、細則の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、当該区分所有関係の実態に照らして、その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいうものと解される (最高裁平成8年 (オ) 第258号同10年10月30日第二小法廷判決・民集52巻7号1604頁参照) 。
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ウ
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そこで、以下、本件について検討する。
前記前提事実に加え、争いのない事項、後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
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(ア)
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本件駐車場の有料化に至る経緯
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a
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本件マンションにおいては、居住者の増加に伴い,土日祝日には本件駐車場が満杯となるなどの問題が発生し,本件マンションの居住者から,本件駐車場の使用方法の見直し,駐車スペースの確保等の要望が寄せられるようになった。そこで,被控訴人は,第35期通常総会議案書の第3号議案の提案に当たり,駐車スペースの確保,本件駐車場利用の有料化等について検討を継続する旨を第3号議案の「1. 現状と提案理由」欄に記載した(乙4)。
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b
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被控訴人は,平成26年4月,本件駐車場の使用料,増設などに関するアンケートを実施し,376戸中203戸から回答を得たところ,本件駐車場使用料についての回答数は230であった。被控訴人は,その結果を第37期通常総会議案書に添付した。(乙5・29頁,乙13・1頁)
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c
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被控訴人は,第38回通常総会において,第3号議案として38期細則を提案し,その提案理由として,組合員全戸に1台の駐車スペースがない中で,本件駐車場使用の公平性を保つ必要がある旨説明し,第3号議案は可決された。(前記前提事実2(4)イ,乙6)
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d
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第38期通常総会において,有料駐車場の駐車場所を固定化してほしいなどの要望が出されたことから,被控訴人は,第39期臨時総会議案書の第1号議案において,有料駐車場の駐車場所を先着自由選択制から固定制に変更するなどの改定を提案し,可決された。(前記前提事実2(4)ウ,乙7)
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(イ)
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本件駐車場使用料の設定根拠
被控訴人の理事会は,本件駐車場の近隣にあるマンションの駐車場や月ぎめの駐車場(5か所)の使用料が月額3200円ないし5292円(乙14の1ないし5)
であったこと及び従来は本件駐車場を無料で使用することができたことなどを考慮し,本件駐車場の使用料を相場よりも安い月額2000円と定めた。(乙10・6及び7頁)。
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(ウ)
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本件駐車場使用料の使途
被控訴人は,本件マンション敷地外に新たに駐車場を賃借し,26台分の駐車スペースを確保しており,本件駐車場の使用料は,この賃貸駐車場の賃借料に充てられている。その結果,駐車場は合計129台分確保され,そのうちの有料駐車場は78台分となった。(乙12の1・2, 弁論の全趣旨)
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エ
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控訴人を含む居住者が受ける不利益
本件駐車場を月に16日以上使用する居住者は,従前は無料で本件駐車場を使用していたところ,細則の変更により,本件駐車場の使用料として月額2000円を支払うという不利益を受けることとなる。
なお、控訴人は、居住者は月額2000円の本件駐車場使用料を負担し、他方、リゾート利用者は外部駐車場を利用すれば1日1000えんを要し、これを1か月最大15日利用すれば1万5000円を要するところ、無償で本件駐車場を使用することができるのであり、そうすると居住者が受ける不利益は1か月で最大1万7000円に及ぶことになるから、その不利益は居住者が受忍すべき限度を超えるものであると主張するが、控訴人の上記主張は、リゾート利用者については外部駐車場を利用する場合と比較して本件駐車場を使用する場合の経済的利益を主張する一方で、居住者については本件駐車場を使用する場合の不利益のみを主張するものであり、両者の比較の方法が恣意的であり不適切であるから、これを採用することはできない。
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オ
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細則変更の必要性及び合理性
前記認定のとおり,本件マンションにおいては、第35期通常総会よりも以前から,居住者の増加に伴い本件駐車場が満杯となるなどの問題が発生しており,本件駐車場を有料化してその収益を本件マンションの敷地外に駐車場を借りる費用に充当することによって駐車場を確保する必要性があったものと認められる。
なお、控訴人は,本件駐車場の使用料についてのアンケートに対する回答数が230となっており,回答した203戸を27上回っていることから,27名の区分所有権を有しない居住者が不正に本件駐車場を使用しており,駐車場不足の解消のためには、それらの車両を排除すれば足りると主張するが,上記のアンケート結果については,複数の選択肢を選んだ区分所有者がいたために生じたものと推測され,上記27の回答を区分所有権を有しない居住者による回答とみるべき根拠はなく, (控訴人は、上記のアンケート結果は、@「現在のまま」が71名、A「有料にする」が39名、B「2台目有料」が118名、C「無回答」が2名であるが、@ないしBについて複数回答はあり得ないから、他のアンケートの回答者である203名を超える27名は区分所有権を有しない居住者が本件駐車場の使用料に関するアンケートについてだけ参加したものであると主張するが、アンケートの一部の事項についてだけ区分所有権を有しない居住者が参加したということは容易に想定し難いことであるし、1台目については現在のままがよいが、2台目については有料にすべきであると考えるものは@及びBと回答し、1台目についても2台目についても有料にすべきであると考えるものはA及びBと回答することも十分考えられるから、控訴人の上記主張は採用することができない。)
、また、後記のとおり、管理規約15条が区分所有者が賃借人等の区分所有権を有しない居住者を通じて本件駐車場を間接的に使用することを否定しているとまで解することはできず、区分所有権を有しない居住者の本件駐車場の使用が違法であるということもできないから、控訴人の上記主張は採用することができない。
また、本件駐車場の使用頻度の低いリゾート利用者と、日常的に本件駐車場を使用する居住者とでは、本件駐車場の使用によって受ける利益の程度が異なること及び本件駐車場の使用料は近隣の駐車場使用料の相場の半額程度とされており、過大な負担を負わせるものではないことからすると、使用頻度の高い居住者に上記の負担を負わせることには合理性があるといえる。
したがって、本件における細則の変更には、必要性及び合理性が認められる。
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カ
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以上によれば、細則変更の必要性及び合理性が認められ、控訴人を含む区分所有権を有する居住者が受ける不利益が受忍すべき限度を超えると認めることはできないから、「特別の影響を及ぼすべきとき」 (区分所有法31条1項後段)
に当たらず、本件駐車場を有料化する細則の変更について控訴人の承諾を得る必要はないと解するのが相当である。
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キ
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よって、控訴人の上記アの主張は採用することができない。
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(4)
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39期細則に固有の無効事由があるか (争点(4))
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ア
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(ア)
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控訴人は、管理規約47条3項2号によれば、敷地及び共用部分等を変更する場合においてその形状又は効用の著しい変更を伴うときは組合員総数及び議決権総数の各4分の3以上で決することが必要であるところ、本件駐車場を有料部分と無料部分に分けることは共用部分の効用の著しい変更に当たるから上記の方法による決議が必要であるにもかかわらず、39期決議は出席議決権の過半数のみで決議しているから、39期細則は同号に違反し無効であると主張する。
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(イ)
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管理規約47条3項2号の「共用部分等」は共用部分及び附属施設をいう (管理規約2条7号) が、前記のとおり、本件駐車場は「建物の敷地」の一部であるとともに「共用部分以外の付属施設」に当たるから、本件駐車場を有料部分と無料部分に分けることが、「効用の著しい変更」に当たる場合には、管理規約47条3項2号の適用を受けるところ、「効用の変更」とは、当該部分の機能や用途を変更することをいい、それが「著しい変更」に当たるかは、変更を加える箇所及び範囲、変更の態様及び程度を勘案して判断すべきである。
これを39期細則について見るに、39機細則は本件駐車場を有料部分と無料部分に分け、有料部分を固定制とする等の変更をするにとどまり、本件駐車場を駐車スペースとして用いるという点では変わりがないから、機能や用途に変更があるとはいえない。--[p22Last]
なお、控訴人は、本件駐車場の専用使用を望まず、半月以上を自動車による旅行等をする居住者は無料部分を使用することができず、他方、本件駐車場の専用使用を望むリゾート利用者は有料部分を使用することができず、これは無料駐車場の一部共用駐車場への実質的変更であるから、効用の著しい変更に当たるとも主張するところ、その主張の趣旨は必ずしも明らかでないが、控訴人の上記主張はあくまでも本件駐車場使用の対価の有無を問題とするにとどまっており、本件駐車場の機能や用途の変更について主張するものではないから、控訴人の上記主張は採用することができない。
したがって、39期細則により本件駐車場の機能や用途の著しい変更があるとは認められず、普通決議によって39期細則を制定することができるものということができる。
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(ウ)
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よって、控訴人の上記(ア)の主張は採用することができない。
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イ
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控訴人は、総会の出席者は書面又は代理人により議決権を行使した者及び委任状を提出した者の議決や委任の状況を確認することができないから、それらの開示を拒否して行われた39期決議は無効であると主張する。
しかしながら、区分所有法や管理規約には、被控訴人に対して上記事項を区分所有者に開示することを義務付ける規定はなく、それらが開示されなかったからといって39期決議が無効であるということはできないから、控訴人の上記主張は採用することができない。
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ウ
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控訴人は、39期決議が一事不再議の原則に反すると主張する。
しかしながら、区分所有法や管理規約には一事不再議についての規定はなく、また、38期細則と39期細則とではその内容も異なるから、39期決議がいわゆる一事不再議の原則に反するともいえず、控訴人の上記主張は採用することができない。
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(5)
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39期細則が公序良俗に反するか (争点(5))
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ア
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控訴人は、38期細則は、本件駐車場の有料化に異議を唱える控訴人に本件駐車場を使用させないため、本件駐車場を使用することができる自動車を乗用車又は貨物兼用乗用車に限定し、控訴人の使用する軽トラックを排除しているから、38期細則は控訴人を不当に差別しその人権を侵害するものとして公序良俗に反しており、それに基礎を置く39期細則も公序良俗に反すると主張するが、後記のとおり、39期細則は、38期細則が施行される前にそれを全面的に改正して成立したものであり、38期細則に基礎を置くものではないから、控訴人の上記主張は採用することができない。
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イ
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控訴人は、39期細則は、被控訴人が区分所有者のうち多数を占めるリゾート利用者に本件駐車場の無料での使用を認めるという利益を与えて賛成するよう誘導して決議されたものであり、このような不当な決議により駐車場不足の解消に要する費用の負担が居住者に転嫁させられたから、39期細則は公序良俗に反すると主張するが、本件駐車場の使用頻度の高いものに使用料を負担させることには合理性があることは前記説示のとおりであり、また、そのような内容の決議をしたからといって、それが利益誘導による不正な決議であると評価することも相当でないから、控訴人の上記主張は採用することができない。
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ウ
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控訴人は、39期細則2条は区分所有権を有しない居住者にも本件駐車場の使用を認めるところ、それは、管理規約15条及び16条2項に違反し、また、旧使用細則2条13号及び39期細則の他の規定 (5条及び14条2号) と矛盾するから、39期細則は公序良俗に反すると主張するが、次のとおり、いずれも採用することができない。
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(ア)
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控訴人は、管理規約15条は「区分所有者は、管理組合法人が管理する駐車場・・・の使用について、別に定める使用細則の定めるところにより、使用することができる。」と規定する一方、区分所有権を有しない居住者については何も規定しておらず、その反対解釈により区分所有権を有しない居住者は本件駐車場を使用することができないと解されるにもかかわらず、39期細則2条は区分所有権を有しない居住者に対しても本件駐車場の使用を認めているから、39期細則2条は管理規約15条に違反すると主張する。--[p25L5]
しかしながら、管理規約15条が区分所有者が賃借人等の区分所有権を有しない居住者を通じて本件駐車場を間接的に使用することを否定しているとまで解することはできないから、控訴人の上記主張は採用することができない。
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(イ)
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控訴人は、管理規約16条2項は第三者に使用させることができる共用部分から本件駐車場を除外しており、この第三者とは区分所有権を有していないものを意味するから、39期細則2条は管理規約16条2項に違反すると主張する。
しかしながら、管理規約16条2項において敷地及び共用部分等から本件駐車場が除かれているのは,管理規約15条で本件駐車場の使用については使用細則の定めるところによるとされているからであることは明らかであって,39期細則2条が管理規約16条2項に違反するとはいえないから,控訴人の上記主張は採用することができない。
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(ウ)
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控訴人は、旧使用細則2条13号は「駐車場使用者」について「管理組合法人から許可証の交付を受けて駐車場を使用する区分所有者をいう。」と定義付けており、本件駐車場の使用細則が改正されても旧使用細則の第5章の内容が変わっただけで上記定義規定は適用されるから、39期細則2条は旧使用細則2条13号と矛盾すると主張する。
しかしながら、旧使用細則2条の柱書きに「この細則において、次に掲げる用語の意義は、それぞれ各号に定めるところによる。」と記載されていることから明らかなとおり、同条13号は、旧使用細則における用語の定義規定にすぎず,旧使用細則の「第5章 駐車場の使用」等の本件駐車場に関する規定が39期細則によって廃止された (控訴人は、旧使用細則が改正されて第5章の内容が変わっただけであると主張するが、39期細則附則2条により、旧使用細則の「第5章 駐車場の使用」等は廃止されているのであって、改正されたわけではない。) ことにより,旧使用細則2条13号の定義規定は不要となったものであり、39期細則が旧使用細則2条13号を適用ないし準用しているわけでもないから,39期細則2条は旧使用細則2条13号と矛盾しない。
したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
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(エ)a
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控訴人は、39期細則5条は区分所有権を有しない者は駐車場使用の申し込みをすることができないと規定しているから、39期細則の2条は5条と矛盾すると主張する。
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b
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しかしながら、39期細則2条は本件駐車場を使用できる者を定め、5条は本件駐車場使用の申込みができる者を定めるものであって、区分所有権を有しない居住者が本件駐車場を使用する場合には当該居住者が居住する区分所有建物の区分所有者がその申込みをしなければならないというだけであって (39期細則別記様式第1の「駐車場使用申込書・解約届」でも、申込者 (区分所有者) と使用者が別である場合を想定した記載内容を定めている。)
、39期細則の2条と5条の内容が矛盾するわけではない。
なお、この点につき、控訴人は、39期細則2条は「駐車場は、組合員又は居住者所有し、かつ、使用する車両とし、第3条・第4条の条件を満たした1戸につき1台とする。」と規定するところ39期細則3条及び4条は区分所有建物に居住していることを許可の条件としているから、当該区分所有建物に居住していない区分所有者が区分所有権を有しない居住者のために本件駐車場使用の申込みをすることはできないと主張するところ、39期細則3条及び4条は本件駐車場の使用を許可される使用者及び車両に関する条件を定めるものであり、申込者が当該区分所有建物に居住していることを申込みの条件とするものではないから、控訴人の上記主張は失当である。
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c
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したがって、控訴人の上記aの主張は採用することができない。
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(オ)
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控訴人は、39期細則14条2号は区分所有権を有しないものが本件駐車場を使用することを禁止している (管理規約15条は本件駐車場を使用することができるのは区分所有者であると規定しているし、管理規約16条2項及び19条においては区分所有権を有しない者を「第三者」としているから、39期細則14条2号においても「第三者」は区分所有権を有しないものと解すべきである。)
から、39期細則の2条は14条2号と矛盾すると主張する。
しかしながら、39期細則が区分所有権を有しない居住者にも本件駐車場の使用を認めていることはその2条及び3条の規定から明らかであり、14条2号の「第三者」については本件駐車場の使用を許可された組合員及び区分所有権を有しない居住者以外の者を指すと解するのが相当である (なお、管理規約15条が区分所有者が賃借人等の区分所有権を有しない居住者を通じて本件駐車場を間接的に使用することを否定しているとまで解することはできないことは前記のとおりであるし、管理規約16条2項及び19条において「第三者」が控訴人主張のように解釈されるとしても、それは上記各条項の内容からそのように解釈されるというだけのことであって、39期細則14条2号においても同様に解釈すべきであるということにはならないから、同号が区分所有権を有しない者が本件駐車場を使用することを禁止していると解することはできない。)
から、39期細則の2条は14条2号と矛盾しない。
したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。
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(6)
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控訴人は、39期細則は平成28年1月1日から施行されるものであるにもかかわらず、被控訴人は平成27年11月16日から本件駐車場使用の申込みを受け付けており、39期細則が施行日前に施行されたから、39期細則は無効であるとも主張するところ、確かに証拠 (甲8) によれば、被控訴人は同日から本件駐車場使用の申込みを受け付けていることが認められるが、平成28年1月1日の施行日から本件駐車場を使用するためにはその準備行為が必要であり、施行日前にその準備行為をしたからといって、39期細則が無効になると解さなければならない理由はないから、控訴人の上記主張は採用することができない。
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(7)
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控訴人は、以上のほかにも39期細則が無効であるとしてるる主張するが、39期細則が無効であると認定判断するに足りる的確な主張立証はない。
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(8)
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したがって、39期細則が無効であるとは認められない。
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2
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38期細則が無効であることの確認を求める訴えについて
控訴人は、39期細則の附則には38期細則を廃止する規定がないから、38期細則及び39期細則が生きている二重細則の状態となっているところ、38期細則は、本件駐車場の有料化に異議を唱える控訴人に本件駐車場を使用させないために、本件駐車場を使用することができる自動車を乗用車又は貨物兼用乗用車に限定し、控訴人の使用する軽トラックを排除しており、38期細則は控訴人を不当に差別しその人権を侵害するものであるから、公序良俗に反し無効であると主張し、38期細則が無効であることの確認を求めている。
しかしながら、39期決議においては、本文全16箇条の新たな駐車場利用細則 (39期細則) に改正することが可決されたのであって (乙7、乙15) 、38期細則は、施行される前に全面的に改正されて施行されることはなかったのであるから、控訴人の権利義務又は法的地位に何ら影響を与えていない。
したがって、38期細則が無効であることの確認を求める控訴人の訴えは、確認の利益を欠き、不適法である。
なお、控訴人は、39期細則の附則において、旧使用細則の「第5章 駐車場の使用」等の本件駐車場の利用に関する規定を廃止するとされているが、38期細則を廃止するとはされていないから、38期細則も併存していると主張するが、39期細則の附則において38期細則を廃止する旨を規定しなかったのは、38期細則が施行される前に全面的に改正され、その廃止を問題にする余地がなかったからであると解されるから、控訴人の上記主張は採用することができない。
また、控訴人は、被控訴人から、本件駐車場が空いているにもかかわらず、平成28年1月18日付けで本件駐車場を使用することができない旨の通知を受けたから、38期細則は現在の控訴人と被控訴人との間における本件駐車場についての権利関係に影響を及ぼしているという趣旨の主張をするが、上記のとおり、38期細則は施行前に全面的に改正されて施行されることはなく、控訴人の権利義務又は法的地位に何ら影響を与えていないといわざるを得ないから、控訴人の上記主張は採用することができない。
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3
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そうすると、38期細則が無効であることの確認を求める控訴人の訴えは不適法であるからこれを却下し、39期細則が無効であることの確認を求める控訴人の請求は理由がないからこれを棄却すべきところ、これと同旨の原判決は相当である。
よって、本控訴は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
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