平成28年(ワ)第11号 駐車場利用細則無効確認請求事件

原告 若林昭夫

被告 春日居ライフピアマンション管理組合法人

第 3 準 備 書 面

平成28年5月30日 

甲府地方裁判所民事部合議B係 御中

原告 若林昭夫(印) 

頭書事件について、原告は、下記の通り弁論を準備する。

第1

 被告の平成28年5月17日付被告第2準備書面(以下、「被告」という)に記載の被告の主張に対する反論。

1  

 被告第1の1は争う。
被告代理人は本件細則変更は「規約の変更」には該当しないと何の根拠も示さずに断定する。自分が断定すればそれが正しいのであり、原告の主張は失当であると主張する。全く意味をなさない。原告第2準備書面第1の7に述べたように、区分所有法19条は共用部分の負担を持分以外に変更するには規約に別段の定めが必要とある。本件細則変更は規約に別段の定めが無いにも関わらず、ある場合と同じ変更を細則で行った。これが細則による規約の変更でないなら、細則による有料化は同法19条及び30条違反で無効、事実上の規約の変更なら同法31条1項後段の承諾がなく無効である。

2 (1)

 被告第1の2(1)は全て争う。
乙16の1、16の2の判例は本件細則とは全く異なる事情の判例であり、同法31条1項後段の適用意外意味がない。

 判例の駐車場は分譲開始時から規約に一部の者が専用使用できる定めがあり、他の者は利用できないのを承知で購入した。本件マンションの場合は、駐車場に専用使用権の設定はなく、誰でも無料であると承知の上で購入した。従って、前者は同法19条の持分の適用はないが、後者は同条及び30条の適用が必須である。

 前者は規約及び料金を変更し、専用使用者の旧規約による専用使用権の消滅、利益の減少を図るが、後者は、リゾート者の旧細則による利益を維持し、居住者の旧細則による無料使用の権利を消滅させ、更に、駐車場の従来の管理費用及び利用料金を払えという、民法90条公序良俗に反する不埒な変更である。料金が近隣の料金に比べ相当かどうかなどは関係ないことである。

 個人の財産を他人が勝手に処分することは民主主義国では認められない。集合住宅では多くの事項を多数決で処理することは止むを得えない。その時個人の財産に不利益が及ぶときは拒否権を行使できると同法31条1項後段は定めている。不利益が受認の限度を越えるか否かは本人が判断することで他人が判断することではない。本人以外は裁判のみが判断できる。法や規約・細則に違反し、民法90条公序良俗に反する細則変更による不利益は受認の限度を著しく越える。

(2)

 被告第1の2(2)は、居住とリゾートの混在であることは認めるが、更に、甲1、乙5のアンケート時、区分所有者と所有権を持たない賃借人173との混在でもある。駐車場が105台は認めるが、「・・・間に合わせていた」迄は不知。その余は争う。

 規約・細則により駐車場利用の出来ない賃借人27名に、被告代表者が不正な許可を与えて約三割の駐車区画を占拠するのが不足の最大原因である。被告代理人は外部駐車場26台分を借りて問題は解決したと主張する。不正利用者27名を排除すれば駐車場不足は起きない。有料化は必要ない。

 複数戸を所有する一部区分所有者は本マンションの専有部分と共用部分を用いて賃貸事業を営んでいる。その総戸数が173であり、これらは隣のマンションである。区分所有法15条、規約11条は専有部分と共用部分の分離処分を禁じているから、共用部分の利用に関する173の持分は専有部分に付属する。従って、賃貸事業者はこれらの持分で駐車場の利用はできない。規約に別段の定めがあるから同法19条により、賃借人はこの持分で駐車場の利用はできない。賃借人の駐車場は賃貸事業者が自らの資金で他の場所に確保すべきである。細則変更はその費用を何の責任も義務もない居住区分所有者に負担させるもので、公序良俗に反する。

 被告代理人は、有料駐車場は78台になり、居住者の駐車区画は確保したと述べるが、被告第3の1(2)では居住者は100戸近くと述べている。原告を含む二十数名は追い出したとの宣言であるが、その法的手続きは行われておらず、公序良俗に反する。公平という被告代理人の主張は支離滅裂である。

 本マンション南側の何の役にも立っていない庭を駐車場に変えれば60〜70台の駐車場ができる。芝刈りや庭木の剪定費用も不要になる。有料化は必要ない。

(3)

 被告第1の2(3)は、全て争う。
有料化が必要でないのに有料化するのは合理性がない。公序良俗に反する有料化で駐車場不足が解消されても、駐車料金が近隣に比べて相当でも全く合理性はない。被告の主張は、居住区分所有者から金をとり、近隣駐車場を借りて不足の解消ができたと言うもので、公序良俗に反しても結果が良ければ全て良し、即ち、必要性と合理性があると主張するもので不当極まりがない。

(4)

 被告第1の2(4)は否認する。
相当か否か、公平か否かは居住区分所有者とリゾート者で比較するもの。前記の判例は専用利用者と外部駐車場利用者の比較であるが、後者の負担は旧規約も変更後も外部駐車料金であり、料金との比較で専用使用者の負担が相当か否かの判断ができる。本マンションの場合は、リゾート者の負担は旧細則も新細則も零であり、居住者の負担を零と比較しなければならない。近隣の駐車場利用料金は全く無関係である。

(5)

 被告第1の2(5)は否認する。
上記により、本件一部有料化は必要性、合理性を全く有さない。リゾート者の負担零円に対し、居住者の負担二千円と駐車場部分の共有権及び利用に関する持分の消滅、更に、駐車場部分の税金等管理費用を含む管理費の負担は、区分所有法31条1項後段の到底受認できない特別の影響である。

第2

 被告第2に対する反論

1  

 被告第2の1は全て否認ないし争う。
訴状と原告第2準備書面とは形式的にも内容的にも同じではない。被告代理人が根拠なく同じと決めつけたにすぎない。被告の主張は第1準備書面の通りとあるが、訴状の請求の原因の項目番号は第2から始まるが原告第2準備書面は第1から始まり、細目番号も皆ずれていて被告第1準備書面は原告第2準備書面には対応しない。訴状の請求の原因には区分所有法19条を根拠とした主張はなく、第2準備書面はそれを主たる根拠としており、内容的にも被告第1準備書面は原告第2準備書面には対応しない。従って、原告第2準備書面に対し認否、反論する準備書面の提出はなく、原告第2準備書面の全ての項目について被告は沈黙したと認められる。

2 (1)

 被告第2の2(1)細則変更が区分所有法19条に違反すると原告が主張する事実は認める。

(2)

 被告第2の2(2)は否認ないし争う。
共用部分の費用負担や利益収取をどのように定めるかは区分所有者の内部自治に委ね得る性質の事項などという規定はない。被告代理人は常にこのように、書いてない独善的な条件を断定して法律を都合よく解釈し弁論する。慣習は法に優先すると言うのが法律の基本的考え方である。多くの規約があり、争いの統一的解決には統一した規定が必要になり法律ができる。しかし、区分所有法19条は規約に別段の定めがある場合はそれを尊重し、例外としているのである。被告代理人の主張が正しいと仮定しても、費用負担や利益収取を持分以外の割合に変えるには規約に別段の定めが必要なことは変わらない。一体被告代理人は何を証したいのか。原告の主張に対する反論なら、規約に別段の定めは必要でないことを証さねばならない。被告代理人の主張は支離滅裂である。

(3)

 被告第2の2(3)は否認ないし争う。
那覇地判(平成16.3.25 判タ1160-265)には、当該事項が「管理」に関する事項であれば規約によるまでもなく集会の決議で決することができ、「管理」の範囲を越える場合には、規約による定めが必要とある。区分所有法19条は、共用部分の費用負担や利益収取を持分以外の割合にするには規約に別段の定めが必要と述べる。即ち、この別段の定めは「管理」の範囲を越えると述べている。それにも係わらず細則によりこの割合を変えた本件駐車場利用細則は同法19条に違反する。被告代理人の主張は細則で何でも決定できるという独善的主張であり、民法90条公序良俗に反する。

(4)

 被告第2の2(4)は否認ないし争う。
被告代理人が主張の根拠とする東高民時報38巻の事例は証拠能力に問題がある。乙16の1、16の2と異なり、乙号証に列挙していないことより明らかである。管理費等請求事件、東京地裁平元(ワ)6195号(平224民15部判決、棄却(控訴))は、規約の定めにより、管理費等の額に法人名義(被告)と個人名義で差異を付けること自体は不公平とはいえないが、規約に区分所有法19条の原則を変更する旨の明文の規定を欠き、法人名義の場合を個人名義の場合の最大1.651倍に設定したのは合理的限度を越えた差異を設ける不公平なもので、区分所有法の趣旨、公序良俗に反し無効であると論ずる。本件駐車場有料化は規約に同法19条の原則を変更する旨の明文の規定を欠き、リゾート者の負担は零とし、居住区分所有者の負担は、共有権及び利用権を消滅させ、その部分に対する管理費用は従来通り徴収し、更に、二千円を課すものである。その差異はリゾート者の負担1に対し無限大であり、合理的限度を著しく越えた不公平なもので、区分所有法の趣旨、公序良俗に反し無効である。

3  

 被告第2の3は否認する。
被告代理人は何の根拠も示すことなく、被告代表者理事長の解任は本件利用細則の有効性とは無関係と主張する。全ての準備書面に見られるように、被告代理人は常に自分の弁論に都合の良い前提を証拠なく断定し弁論する。本件利用細則は区分所有法19条、30条、31条、民法90条公序良俗に反し無効である。このような細則を起案し、公序良俗に反する採決で議決し、施行したのは被告代表者理事長である。本件利用細則は公序良俗に反する被告代表者理事長の考え方に起因するものであり、その有効性と理事長の適格性とは密接に関係する。このような著しく適格性を欠く理事長を解任するべきことを再度被告に進言する。

第3

 原告の主張

1  

 本件駐車場利用細則の内容的な無効理由。

(1)

 本件駐車場利用細則(以後、新細則という)甲6乙7の附則には第38期通常総会で決議した改訂利用細則(以後、38期細則という)甲4乙6を廃止する記載がない。これは二つの細則が生きてる二重細則であり、下記の下心によるものである。両細則とも民法90条公序良俗に反し無効である。

(2)

 38期細則は第2条2に駐車場を利用できる自動車は、乗用車又は貨物兼用乗用車とするとあり、原告が日常の交通手段とする軽トラックの利用を禁じている。これは、憲法の保障する自由の侵害、及び異議を唱える原告を排除せんとする個人攻撃、人権侵害であり、民法90条公序良俗に反し無効である。

(3)

 新細則は、原告の内容証明(甲5)による憲法違反の指摘により、38期細則にあった車種制限は削除した。しかし、第6条には申し込みを受けたときは理事会で審査し適否を決定するとあるが、細則なのに審査基準は何も記していない。原告の申し込みに対しては38期細則の車種制限を理由に拒否するために、38期細則の廃止を新細則附則に記載していないのである。両細則は公序良俗に反し無効である。

(4)

 新細則第2条は組合員又は居住者が駐車場利用可能と述べ、区分所有権を有しない、共有者、同居者、賃借人等も利用できるとする。しかし、下記に示す矛盾及び規約違反があり新細則は無効である。38期細則も同様である。

 新細則第5条は区分所有権を有しないものは申し込みをすることが出来ないとあり、第2条は矛盾である。

 又、同第14条2は第三者に駐車場を使用させることは禁止事項とある。第三者とは区分所有権を有しない者であり、第2条は矛盾である。

 【使用及び共同生活の秩序維持に関する細則】(甲2乙2)第2条(13)駐車場使用者とは管理組合法人から許可証の交付を受けて駐車場を使用する区分所有者を言うとあり、新細則第2条は矛盾である。

 規約(甲2乙1)第16条2は第三者に使用させることができる対象から駐車場を除いている。新細則第2条は規約違反である。

2  

 本件駐車場利用細則制定の手続的無効理由

(1)

 両細則の議決は、居住区分所有者の駐車場利用に二千円の負担を課すため、リゾート者の負担を零円とする二千円相当の賄賂を与えた議決であり、公序良俗に反し無効である。

(2)

 駐車場の有料化は費用負担や利益収取を区分所有法19条の例外規定により持分から他の割合に変えることで、規約に別段の定めが必要である。管理費等請求事件、東京地裁平元(ワ)6195号(平224民15部判決、棄却(控訴))は、別段の定めを、19条の原則を変更する旨の明文の規定と述べる。規約乙1には明文の規定はなく、第25条2に管理費等(敷地及び共用部分等の管理に要する経費に当てる費用)の額は各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出とある。規約に明文の規定のない本件細則による有料化は同法19条及び規約事項、同法30条違反である。

(3)

 上記判例は、規約に明文の規定を欠き、当該者の承諾等特別の事情のない場合は(同法31条1項後段に相当)、一定の範囲を越える差異を設ける規約、決議は民法90条に反すると述べる。更に、差異を1.651倍に設定したのは合理的限度を越えた差異を設ける不公平な(受認の限度を越える)もので、区分所有法の趣旨、公序良俗に反し無効であると論ずる。本件駐車場有料化は規約に同法19条の原則を変更する旨の明文の規定を欠き、原告の承諾なく(甲5、甲9)、リゾート者の負担は零とし、居住区分所有者の負担は、共有権及び利用権を消滅させ、その部分に対する管理費用は従来通り徴収し、更に、二千円を課すものである。その差異はリゾート者の負担1に対し無限大である。

(4)

 被告代理人は常に居住区分所有者の負担二千円が近隣駐車場料金に比べて相応であり、リゾート者との間に不公平はない等と全く意味のない弁論を展開する。上記判例のように、リゾート者の負担零円に対して二千円の負担が相応である根拠を示す必要がある。近隣の駐車場料金は無関係である。

3  

 駐車場有料化の必要性と合理性

(1)

 甲1乙5の別紙アンケートによれば区分所有者203の内、居住71、リゾート120、賃貸事業10、無回答2、全戸数376の内賃貸戸数173、その内駐車場不正利用者27強である。不正利用者が駐車区画約三割を占める。

(2)

 必要性とはその手段、方法以外では問題解決の出来ない事情である。被告は居住区分所有者に二千円を課すことで問題は解決したというが、単に事実を述べたにすぎない。それ以外に方法がないという事情が必要性である。不正利用者27を有料外部駐車場に移せば有料化しなくても解決する。マンション南側の何の役にも立たない庭を駐車場にすれば60〜70台の駐車場ができる。芝刈りや樹木の剪定等の管理費用の削減にもなる。

(3)

 必要性がないのに有料化するのは合理性がない。上記の三つの場合を見るに、必要性は皆同程度だが合理性は大きく異なる。最も合理性の高いのは庭を駐車場にする方法であり、次は不正利用者を外部の駐車場に出す方法である。これらは区分所有法にも規約・細則にも反することなく問題解決ができる。最も合理性の低いのが本件細則による居住区分所有者を有料とする方法である。最も合理性の低い方法を採る理由は、リゾート者は無料という僅かな賄賂で賛成するし、居住区分所有者は駐車場不足の責任を転嫁すれば反対できないと被告理事長は考えたからである。被告理事長は是が非でも居住区分所有者を有料にしたいのであり公序良俗に反する。

(4)

 居住区分所有者の有料化は第1段階で、最終目的は修繕積立金を取り崩して立体駐車場を建設し、自分達の資金を使うことなく賃貸事業用の駐車場を確保することである。その証拠は、原告第2準備書面の第3原告の主張の1項全ての細目に対して被告代理人が沈黙、即ち、自白した事実である。これは被告代表者理事長の修繕積立金横領の企てであり、駐車場有料化の合理性は全くない。

4  

 以上のような公序良俗に反する管理運営を行う被告代表者理事長は著しく適格性を欠く者であり、被告はかかる理事長を解任するべきであることを重ねて進言する。


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