平成28年()第11号 駐車場利用細則無劾確認請求事件

原  告   若 林 昭 夫

被  告   春日居ライフピアマンション管理組合法人

第  1 準  備  書  面

平成28年3月28日 

甲府地方裁判所民事部合議B係  御中

被告訴訟代理人弁護士  丸 山 公 夫  

同  弁護士  前 田 直 哉  

第1 平成28年3月2日付訴え変更申立書「第1 請求の趣旨」に対する答弁

 1 原告請求をいずれも棄却する。

 2 訴訟費用は、原告の負担とする。

第2 訴状「第2 請求の原因」に対する認否

 第1項について

(1)

 第1項柱書は、平成269月下旬には「春日居ライフピアマンション管理規約」 (1、以下「規約」という。) 15条に基づき定められた「春日居ライフピアマンションの使用及び共同生活の秩序維持に関する細則」(2、以下「旧使用細則」という。) によって本件マンション内の駐車場が無料であったこと、同年12月に懇談会 (原告は「懇親会」と述べるが正確には「懇談会」である。)で有料化の話が出たことは認めるが、その余は不知。

(2)

 第1項(1)は、概ね否認する。被告は、懇談会で駐車場利用者間に不公平が生じないようにしたいと述べただけである。

(3)

 第1項(2)はアンケート4の結果、有料化賛成が39、反対が712台目有料が118であることは認めるがその余は否認ないし争う。

(4)

 第1項(3) は被告が駐車区画が不足していると述べたことは認めるがその余は否認ないし争う。平成26年当時、区分所有者は、被告理事会の許可を得れば2台目の駐車も可能であったが、許可を受けずに不正に2台駐車させていた者は、3名に過ぎず駐車区画の不足の主たる原因ではない。また,区分所有者の総数は376名である。さらに、区分所有者以外はアンケートに回答していない。

(5)

 等1項(4)は否認ないし争う。上記の通りアンケートの回答は区分所有者が行っており、問題ない。

 2項は、概ね否認ないし争う。懇談会は平成275月に開かれ、その懇談会の際原告が、駐車場不足緩和のため区分所有者が一戸ー台のみ駐車を可能にするべき等の持論を述べたことはあるが、被告はそれに対し有料化が必要であるとの見解にこだわっていない。この懇談会は駐車場の有料化について区分所有者の意見を聞くために開催されたのであり、懇談会で特に被告が有料化にこだわる必要はなかった。

 第3項は、第38期通常総会議案書で駐車場有料化のため、旧使用細則の改定案である「春日居ライフピアマンション管理組合法人駐車場利用細則(案)」(乙6、以下「利用細則案」という。)」が提案されたことは認めるが、その余は概ね否認ないし争う。
 平成27年8月8日以前は、規約15条 (駐車場等の使用) において「区分所有者は、管理組合法人が管理する駐車場、自転車置場及びトランクルーム(以下「駐車場等」という。)の使用について、別に定める使用細則の定めるところにより使用することができる。」と規定され、駐車場の使用については旧使用細則で規定することになっていた。
 そして、駐車場の有料化は、駐車場の使用方法に関する問題である。
 したがって、駐車場の有料化は、規約の変更が不要であり、旧使用細則の変更で足りるものである。

 第4項について

(1)

 第4項柱書は、否認ないし争う。
 利用細則案が区分所有者のうち居住者(本件マンションを生活の本拠とする者) 及び1ヶ月に16日間以上利用する者を有料、その他のリゾート利用者(本件マンションを生活の本拠とせず、行楽時のみ短期間利用する者)を無料とする提案であることは認めるが、「居住者71名」、「その他のリゾート利用者120名」とする点は否認する。居住者は100戸近く存在する。

(2)

 第4項(1)は、否認ないし争う。
 建物区分所有者等に関する法律(以下「建物区分所有法」という。)30条1項は、建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分 所有者相互間の事項は、同法に定めるもののほか、規約で定めることができると規定しているが、使用細則で定めることを禁じていない。
 なぜなら、同法30条1項は、駐車場等の附属施設の管理について、「規約で定めることができる」と規定するのみで、「規約で定めなければならない」と規定していないからである。
 さらに、共有部分の管理は集会の普通決議で決定できるところ(同法18条1項)、区分所有者の共有に属する敷地の一部にもうけられた駐車場につき専用使用権を設定するか、専用使用権をどのような内容のものとするか、その得喪につきどのような定めをするかなどは、軽微な変更であり共有部分管理に当たるため、規約に定められなかった場合は、管理組合総会の普通決議によって決定することができる(福岡高等裁判所平成7年10月27日判決)。
 そして、本規約は、共有部分等の管理である駐車場の使用について、規約で定めず使用細則で規定し、集会の普通決議で決定できるとしている(規約48(4),規約第47条1項,2項,3項(1)反対解釈)。
 したがって、規約変更によらず、集会の普通決議による旧使用細則の変更 によって駐車場を有料化することは、同法30条1項及び同法18条1項に反しない。 

(3)

 第4項(2)は否認ないし争う。原告は、「駐車料について利用頻度が多 いほど安い、即ち、月極の場合数千円でも月極でない利用は一日千円程度が社会通念である。」と述べるが、そのような社会通念はない。また、原告は、居住者が月極有料駐車場を利用し、リゾート利用者が無料駐車場を使用することは社会通念に反すると主張するが、そのような社会通念はない。

(4)

 第4項(3)は否認ないし争う。「本議案」は利用細則案を指すものと思われるが、利用細則案は、駐車場の使用頻度が高く利益を多く享受している居住者に一定の経済的負担を与え、使用頻度の少ないリゾート利用者に経済的負担を与えないことにより、利用者間の公平を図ろうとするものであり、何ら差別的議案ではない。

(5)

 第4項(4)は、主張内容が不明確であるが、否認ないし争う。本件で問題となっている駐車場は、構造上一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分ではないため、一部共用部分に当たらない。

 第5項について

(1)

 第5項(1)は否認ないし争う。利用細則案は、区分所有者一戸につき一台分の駐車場の利用を認めるとともに、駐車場利用の利益をより多く享受する居住者につき有料化し、駐車場不足を解消しつつ利用者間の公平を図ったのである。

(2)

 第5項(2)は否認ないし争う。日常的に使用している居住者から使用料を徴収することは社会通念に反しない。なぜなら、前述の通り日常的に駐車場を利用する居住者の方がリゾート利用者よりも駐車場から得る利益が大きいからである。

 第6項について

 第6項は、否認ないし争う。
「議案細則」は、利用細則案を指すものと思われるが、この利用細則案2条2項は、軽トラックの利用を禁じていない。

 第7項について

 第7項は否認ないし争う。
 利用細則案が、建物区分所有法30条1項に反しないことは、第4項(2)で述べたとおりである。また規約には、駐車場の管理については細則で制定するように規定されているため、利用細則案は規約に反しない。

  第8項について

 第8項は否認ないし争う。
 原告の主張は不明確であるが、第39期第1回臨時総会で提案された駐車場利用細則 (案)(乙7)は、第38期に適切に制定された利用細則を改定するものであり、改定手続も適切に行われた。また「一事不再議の原則」の内容が不明確であるが、建物区分所有法及び規約等は総会決議の「一事不再議」を規定していないため、原告の主張は前提を欠く。

 第9項について

(1)

 第9項柱書は否認ないし争う。主張内容が不明であるが、第39期の改正の主要な点は、①有料駐車場の駐車場所を先着自由選択制から固定制に変更②駐車場許可条件の明確化③駐車料金支払の明確化④「駐車場利用規 則」の廃止であった(甲6の2、乙6)。

(2)

 第9項(1)は否認ないし争う。本件駐車場利用細則は共用部分の管理に関する規定に過ぎず、共有部分の効用の重大な変更に該当しないため、集会の普通決議で決することができる(法18条1項)。なぜなら、本件駐車場は、従前から駐車場として使用されてきたのであり、効用に変化が生じないからである。

(3)

 第9項(2)は否認ないし争う。原告の主張は不明確であるが、区分所有者は376名である。

(4)

 第9項(3)は否認ないし争う。規約第16条2項から駐車場が除かれている理由は、駐車場等の利用につき規約第15条が細則にゆだねているからである。また、本件駐車場利用細則が建物区分所有法30条のどこに反するのか不明であるので明らかにされたい。

(5)

 第9項(4)は否認ないし争う。被告は駐車区画が105台分、居住者の利用が91台分であると述べたが(乙11)、その余の原告の主張は理由がない。第1項(4)で述べたとおり、アンケートには全ての居住者及びリゾート利用者が回答をしたわけではなく、原告が主張する27名という数は何ら意味がない。また、駐車場利用細則は不正利用者を正当化するものではなく、駐車場利用者の公平と駐車場不足の解消を図るものである。

(6)

 第9項(5)(6)は、駐車場の一部が管理組合法人の所有地であることは認めるがその余は否認ないし争う。駐車料金は、新たに有料駐車場を整備するために発生する諸費用を考慮して判断されるものであり、特に近隣の駐車料金を調査した上で算定しており、徴収した料金は、外部に新たな駐車場を借りるための原資ともなっている。

(7)

 第9項(7)及び(8)は不知ないし否認する。原告の主張内容が不明確であるが、原告の主張が本件とどのように関連するのか明らかにされたい。

(8)

 第9項(9)は否認ないし争う。「この場合」とは、駐車料金を「調整金」とする場合を指すと思われるが、いずれにしても、駐車場利用細則により駐車場を一部有料化することは規約に反しない。

10

 第10項について

(1)

 第10項柱書は否認ないし争う。「本議案」は駐車場利用細則案と思われるが、駐車場利用細則に規定されている事項はいずれも規約事項ではな いので規約の変更には当たらず、建物区分所有法31条1項及び規約47条6項に該当せず、承諾は不要である。
 また、被告は、第39期臨時総会の議決に基づき平成28年1月1日から細則を施行した。

(2)

 第10項(1)は有料駐車場の利用申込み受付を11月16日から同月30日までとしたことは認めるが、その余は否認ないし争う。

(3)

 第10項(2)は掲示をした事実は認めるがその余は否認ないし争う。

(4)

 第10項(3)は否認する。

(5)

 第10項(4)は内容証明郵便が被告に送付された事実は認めるがその余は否認ないし争う。

(6)

 第10項(5)は否認する。原告が掲示物を撮影したことを理由として被告が何らかの対応をした事実はない。「従来の細則廃止等の文言を削除」とは、何から削除したのか、いつ有料区画が65になったのか明らかにされたい。

11

 第11項について

 第11項は、否認ないし争う。

第3 被告の主張

 駐車場利用細則制定の経緯

(1)

 本件マンションは、昭和49年にリゾートマンションとして分譲された。総戸数は376戸であるが、従前駐車場は105台分しか確保されていなかった。
 しかし、本件マションは、行楽シーズンに利用者が急増するものの、本件マンションを生活の本拠にしている居住者が20〜30戸ほどにすぎなかったため、105台分でも特に駐車場不足に陥ることはなかった。
 そのため、従前は、駐車場を全て無料とするとともに、駐車区画を明示する白枠があったものの、各利用者に対して駐車区画の指定をせず、先着優先としていた。

(2)

 しかし、その後、居住者が100戸近くまで増加するようになった。その結果、常時駐車場を利用する者が増えたため、ゴールデンウイークや石和の花火大会の時期(毎年8月22日前後)などの行楽シーズンには、駐車場利用者が多数になり、白枠外に駐車をするなどして急場をしのいでいた。

(3)

 今後も居住者が増加することが見込まれたため、平成24年8月18日の第35期通常総会において、駐車場の利用について居住者の日常生活に必要な車の駐車とリゾート利用者の期間限定の駐車に制限する細則の改正が行われた(乙4、乙8)。

(4)

 さらに、被告は、平成26年4月26日から同年5月10日までの間、駐車場の有料化についてアンケートをとり区分所有者の意向を調査した。また同年12月20日と平成27年5月16日には、区分所有者を集めた懇談会を開催し、区分所有者の意向確認を行った。被告は、懇談会の際、原告からの意見も真塾に受けとめていた。

(5)

 上記のアンケート結果や懇談会の意見等を踏まえ、平成27年8月29日の第38期通常総会において、被告は、駐車場不足の解消のため、居住者には有料で、リゾート利用者には無料で駐車場を利用させる利用細則案を提出した(乙6)。利用細則案の趣旨は、前記第4項(4)記載の通り、使用頻度の高い居住者は、受益が多いため有料とし、使用頻度の低いリゾート利用者は無料として利用者全体の公平を図る点にあった。
 そして、利用細則案は、合計201名の賛成により可決承認された(乙10)。

(6)

 その後、被告は、第38期通常総会で出された意見を考慮し、平成27年11月8日に開催された第39期第1回臨時総会において、①有料駐車場の駐車場所を先着自由選択制から固定制に変更②駐車場許可条件の明確化③駐車料金支払いの明確化④「駐車場利用規則」の廃止を含む、駐車場利用細則案を提出し(乙7)。そして、有料駐車場の駐車場所固定により、居住者は有料である反面駐車場所が確保されることになり、無料で使用するリゾート利用者との間のバランスがさらに図られることになった。
 そして、駐車場利用細則案は、合計191名の賛成により可決承認された(乙11)。
 その結果、駐車場利用細則は、平成28年1月1日から施行された(乙3)。

 駐車場有料化の必要性・合理性

(1)

 駐車場有料化の必要性

 上記の通り、本件マンションの特色は、リゾートマンションであり定住している居住者よりも短期間利用するリゾート利用者の人数が多い点にある。そのため、駐車場の確保についても、両者の異なるニーズに応えながら利用者間の公平を図らなければならない点を考慮しなければならない。すなわち、居住者は毎日駐車場を利用する必要があるのに対し、リゾート利用者は行楽時等の短期間だけ駐車場を利用できれば十分なのである。
 この点、居住者の利便性を重視し居住者用の駐車場を多く確保すると、行楽時においてリゾート利用者が駐車場を利用できなくなる恐れがあるのに対し、リゾート利用者用の駐車場を増やすと、行楽時以外には、無駄な空きスペースが生じ居住者の利便性が過度に害されることになる。
 そこで、両者のバランスを図りつつ、駐車場を確保するために、駐車場利用細則は、居住者を有料にする反面駐車区画を確保させるとともに、リゾート利用者には無料としたのである。しかも、居住者から集めた料金は、本件マンションから離れた新たな駐車場の賃借料にあてられているため、以前に比べ駐車場は26台分増加している(乙12の2)。
 そして、現在駐車場は合計129台分あり、そのうち有料駐車場は78台分あるため希望者全員が利用可能になっている(乙12の1、2)。
 このように、居住者とリゾート利用者の要望に応えながら駐車場の確保をするためには、居住者に対して有料とする本件駐車場利用細則の規定は必要性がある。

(2)

 駐車場有料化の合理性

 駐車場料金について、駐車場利用細則第11条では、理事会で定めることとなっているが、現在は月額2000円となっている。これは、近隣の有料駐車場が月額3000円から5000円であることを考慮して決められたものであり、相当な金額である。また、年間2万4000円という金額は、居住者とリゾート利用者の間のバランスを失するものでもない。

(3)

 以上のように、本件駐車場利用細則による駐車場の一部有料化は、必要性合理性のある変更であり、有効である。




被告の乙号証書面は非常に大量であり,その殆どは本件には不必要なものであるので公開は省略する。原告がそれ等から必要な部分を抜粋して甲号証として提出したものについてのみ乙号証との対応を下記に示す。
乙第1号証、乙第2号証 ⇒ 甲第2号証
乙第6号証 ⇒ 甲第4号証
乙第5号証 ⇒ 甲第1号証
乙第7号証 ⇒ 甲第6号証


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