1
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事案の要旨
本件は,被告の管理する春日居ライフピアマンション(以下「本件マンション」という。)に居住し,本件マンションの駐車場を使用していた原告が,被告に対し,第38期通常総会及び第39期第1回臨時総会において決議された本件マンションの駐車場の有料化に関する各駐車場利用細則は,建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)に違反し,無効であるなどと主張し,各駐車場利用細則が無効であることの確認を求める事案である。
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2
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前提事実(争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
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(1)
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当事者等
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ア
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原告は,平成26年9月下旬頃から本件マンションに居住し,本件マンションの駐車場(以下「本件駐車場」という。)を使用している者である。
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イ
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被告は,本件マンションの建物,敷地及び附属施設の管理を目的として,本件マンションの区分所有者全員をもって構成される管理組合法人である。
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(2)
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本件マンション及び本件駐車場の使用者
本件マンションの区分所有者には,行楽時などに短期滞在することを目的とする者(以下「リゾート利用者」という。)と,生活の本拠として局住することを目的とする者(以下「居住者」という。)がいる。リゾート利用者と居住者が負担する管理費の額に違いはない。
平成27年11月8日当時の区分所有者総数は376名であり,本件駐車場の駐車可能台数は105台であった(乙15)。
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(3)
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管理規約(乙1)
平成21年8月24日から施行されている春日居ライフピアマンション管理規約(以下「管理規約」という。)は,本件駐車場について,「別に定める使用細則の定めるところにより,使用することができる」
(管理規約15条)旨規定している。
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(4)
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使用細則の改定
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ア
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従前の細則(乙2)
平成24年8月18日に開催された被告の第35期通常総会において, 「春日居ライフピアマンションの使用及び共同生活の秩序維持に関する細則」の「第5章 駐車場の使用(20条〜26条)」の改定案が第3号議案として提出され,可決された(乙4)。改訂された細則(乙2。以下「旧使用細則」という。)では,従前どおり駐車場は無料であった。
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イ
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第38期通常総会決議による改定(乙6, 10)
平成27年8月29日に開催された被告の第38期通常総会において,別紙1記載の「春日居ライフピアマンション管理組合法入駐車場利用細則(案)」(乙6・19〜21頁)が第3号議案として提出され,237名(出席者72名,委任状提出者67名,書面又は代理人による議決権行使者98名)中賛成者201名の賛成多数で可決された(以下,この決議を「
38期決議」といい,可決された細則を「38期細則」という。)。38期細則は, その附則により,平成28年1月1日から施行し,これに伴い旧使用細則の「第5章 駐車場の使用(第20〜26条)」は廃止するものとされていた。
38期細則は,駐車場の利用について,概要,次のように規定していた(乙6)。
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(ア)
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共有地内の駐車施設を有料駐車場として扱う(1条)。
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(イ)
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有料駐車場の利用車は,組合員又は居住者の所有する車に限るものとし,利用台数は1戸につき1台限りとする(2条1項)。
駐車場を利用できる自動車は,乗用車又は貨物兼用乗用車とする。(2条2項)。
1か月に16日未満の駐車の場合は,その期間の駐車場使用料金は無料扱いとする(2条3項)。
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(ウ)
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有料駐車場の使用者は,被告と自動車駐車契約を締結する(5条1項)。
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(エ)
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駐車区画は,先着優先,自由選択制とする(8条2項)
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ウ
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第39期臨時総会決議による改定(乙7, 15)
平成27年11月8 日に開催された被告の第39期臨時総会において,第38期通常総会で出された要望・意見を踏まえて,38期細則の見直しを行ったとして,別紙2記載の「駐車場利用細則(案)」(乙7・3〜6
頁)が第1号議案として提出され,245名(出席者47名,委任状提出者26名,書面又は代理人による議決権行使者172名)中賛成者191 名の賛成多数で可決(以下,この決議を「39期決議」という。)され,「春日居ライフピアマンション駐車場利用細則」(以下「39期細則」という。)が成立した。39期細則は,その附則で平成28年1月1日から施行するものとされ,同日から施行された。
39期細則は,駐車場の利用について,概要,次のように規定している(乙3)。
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(ア)
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共有地内の駐車施設を有料駐車場と無料駐車場に区別する(1条)。
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(イ)
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有料駐車場については,組合員又は居住者(原則として本件マンションに住民登録している者)が所有し,かつ使用する車両であって,買い物,通勤など日常生活に必要な車両であることを使用許可条件とする。(3条)
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(ウ)
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無料駐車場については,居住期間が1か月に16日未満で,その間に駐車場を利用する者の車両であることを使用許可条件とする(4条)。
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(エ)
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有料駐車場の使用は,指定された区画に駐車する固定制とする(10条1項)
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(オ)
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有料駐車場の使用料は,理事会が定める(11条)
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エ
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有料駐車場の使用料
有料駐車場の使用料は,理事会で月額2000円と定められた。
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3
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争点
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(1)
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細則によって本件駐車場を有料化することは,区分所有法30条1項に違反するか。
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(2)
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本件駐車場の使用頻度によって,本件駐車場の料金を有料と無料に分けることは,区分所有法19条に違反するか。
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(3)
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本件駐車場を有料化する細則の変更が,原告の権利に「特別の影響を及ぼすべきとき」(区分所有法31条1項後段)に該当し,原告の承諾が必要となるか。
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(4)
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39期細則に固有の無効事由があるか。
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(5)
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38期細則及び39期細則(以下「本件各細則」という。)が公序良俗に反するか。
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4
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争点に関する当事者の主張の要旨
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(1)
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細則によって本件駐車場を有料化することは,区分所有法30条1項に違反するか。(争点(1))
(原告の主張)
区分所有法30条1項は,駐車場等の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項を規約事項としているから,従来無料であった駐車場を有料化するには規約の変更が必要であり,細則で本件駐車場を有料化することは同条項に違反し,本件各細則は無効である。
(被告の主張)
区分所有法30条1項は,附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項について「規約で定めることができる」と規定し,規約で定めなければならないとはしていない。
そして,管理規約15条は,「区分所有者は,管理組合法人が管理する駐車場…の使用について,別に定める使用細則の定めるところにより,使用することができる。」としており,駐車場の使用については,細則で規定することとされている。そして,使用細則の制定,変更又は廃止は,集会の普通決議事項とされている(管理規約48条4項,47条1項,2項)。
したがって,細則によって本件駐車場を有料化することは,区分所有法30条1項に反するものではない。
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(2)
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本件駐車場の使用料が区分所有法19条の「共用部分の負担」に該当し,使用頻度によって本件駐車場の料金を有料と無料に分けることは,同条に違反するか。(争点(2))
(原告の主張)
区分所有法19条は,「各共有者は,規約に別段の定めがない限りその持分に応じて,共用部分の負担に任じ,共用部分から生ずる利益を収取する。」と規定している。
駐車場の使用料は,上記の「共用部分の負担」に当たり,管理規約には同法19条の原則を変更する旨の明文の定めはないから,共有持分の割合に従って負担すべきであるところ,本件各細則は,本件駐車場の使用頻度を基準として費用負担を決定しているから,区分所有法19条に違反する。さらに,管理費等の額について,各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出するものとする管理規約25条2項にも違反するものであり,無効である。
(被告の主張)
区分所有法19条は,共用部分の費用負担や利益収取について区分所有者の内部自治に委ね得る性質の事項と捉え,規約に別段の定めがあればそれに従い,規約に定めがない場合には,共有持分に応じて負担,収取をする旨定めたものである。
管理規約は,駐車場の使用について使用細則の定めに委ねているから,細則を制定・変更することによって使用頻度に応じて使用料を負担させることができるのであり,負担額について持分割合に拘束されることはないから,区分所有法19条に違反するものではなく,管理規約25条2項に違反するものでもない。
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(3)
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本件駐車場を有料化する細則の変更が,原告の権利に「特別の影響を及ぼすべきとき」(区分所有法31条1項後段)に該当し,原告の承諾が必要となるか。(争点(3))
(原告の主張)
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ア
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規約の設定,変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは,その承諾を得なければならない(区分所有法31条1項後段,管理規約47条6項)。
本件駐車場の有料化は,リゾート利用者は使用料を一切負担せず,居住者が使用料を負担し,居住者のみが経済的不利益を受けるものであって,居住者に「特別の影響」を及ぼすべきものである。
したがって,本件駐車場を有料化するためには,「一部の区分所有者」に当たる原告を含めた居住者全員の承諾が必要であるところ,原告が上記承諾をしていないのであるから,本件駐車場を有料化することはできず,本件各細則は無効である。
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イ
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被告は,本件駐車場の有料化の必要性,合理性があると主張する。しかし,有料化の必要性があるというためには,その手段方法以外では解決できない事情がなければならない。
本件では,本件駐車場を不正に使用する者が27名おり(第37期通常総会議案書に添付されたアンケートのうち,アンケート4の回答者数が,他のアンケートの回答者数よりも27名増えており,これは本件駐車場の不正使用者が回答しているためである。)。これらの者による使用を排除したり,本件マンションの庭を駐車場として使用したりすれば,駐車場の不足を解消することができる。したがって,駐車場を有料とする必要性はない。
そしで,必要のない有料化を行うことは合理性を欠くし,駐車場不足を解消するための手段としては,上記のとおり不正使用者の排除や庭の駐車場化などの方法が考えられるところ,本件駐車場の有料化は,最も合理性の低い方法である。
したがって。本件駐車場を有料化する必要はなく,駐車場不足を解消する手段としての合理性もない。
(被告の主張)
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ア
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区分所有法31条1項後段は,「規約の変更」によることなく,規約の定めに基づいた集会決議によってマンション駐車場の使用料が変更された場合に類推適用される。そして,同項の「特別の影響を及ぼすべきとき」とは,規約の設定,変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し,当該区分所有関係の実態に照らして,その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいう。
従来無償とされてきた専用使用権を有償化し,専用使用権者に使用料を支払わせることは,一般的に専用使用権者に不利益を及ぼすものであるが,有料化の必要性及び合理性が認められ,かつ,設定された使用料が当該区分所有関係において社会通念上相当な額であると認められる場合には,専用使用権者は専用使用権の有償化を受忍すべきであり,そのような有償化決議は専用使用権者の権利に「特別の影響を及ぼすべきとき」には該当しないというべきであるとされている。
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イ
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本件駐車場は,区分所有者の総数が376名であるのに対し,駐車区画は105台分しかなく,行楽時にはリゾート利用者が多数利用するため,本件駐車場の駐車区画だけでは足りなくなることが多々あった。そこで,外部の駐車場を借りて使用可能な駐車場を増やすこととし,その原資を得るため,本件駐車場を有料化する必要があった。
そこで,38期細則において,居住者については,本件駐車場の使用頻度が高く,利益を多く享受することから,使用料を支払うものとし,使用頻度の少ないリゾート利用者については,駐車場利用を無料とすることにより,使用者間の公平を図ることとした。さらに,39期細則においては,有料駐車場について,駐車区画を固定制とすることにより,使用料を負担する居住者が確実に駐車スペースを確保することができるよう配慮し,区分所有者間の公平を図った。したがって、本件駐車場の有料化には合理性がある。
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ウ
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本件駐車場の使用料は,近隣のマンションの駐車場や有料駐車場の料金が月額3000円から5000円であることを考慮して,理事会で月額2000円と定められており,近隣の駐車場使用料と比較しても決して高額ではない。また,年額2万4000円という額であれば,居住者とリゾート利用者のバランスを失することにはならず,使用料の額も相当である。
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エ
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したがって,居住者の不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超えるとは認められず,「特別の影響を及ぼすべきとき」には該当しない。
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オ
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なお,原告は,被告が実施したアンケートを根拠として本件駐車場を不正に使用している者が27名存在する旨主張するが,同アンケートは区分所有者のみを対象に行ったものであり,全区分所有者が回答したわけではく,原告が問題とする回答者を上回る回答数は,複数の選択肢を選んだ者が27名いたことによるものにすぎず,原告の主張する不正使用者は存在しない。
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(4)
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39期細則に固有の無効事由があるか。(争点(4))
(原告の主張)
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ア
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39期細則は,本件駐車場を有料部分と無料部分に分けることとしており,これは共用部分の効用の著しい変更であるから,管理規約47条3項により,組合員総数及び議決権総数の各4分の3以上の賛成を必要とするにもかかわらず,39期決議は出席議決権の過半数のみで決議しており,管理規約47条3項に反し,無効である。
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イ
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39期決議は,原告が求めた議決権や委任状等の開示を拒否した上でされたものであり,無効である。
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ウ
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39期決議は,一事不再議の原則に反し,無効である。
(被告の主張)
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ア
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39期細則は共用部分の管理に関する規定にすぎない。本件駐車揚は,従前から駐車場として使用されてきたのであり,有料化されてもその効用に変化は生じないから,共用部分の効用の重大な変更に該当せず,集会の普通決議で決することができる(区分所有法18条1項)
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イ
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原告の主張イは争う。
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ウ
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39期細則は,38期細則の改正案として提案され,適切に決議されたものであり,両細則は同一の内容ではない。細則の変更に原告が主張する一事不再議の原則が適用されるか否かはともかく,39期細則への変更は一事不再議の原則には違反しない。
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(5)
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本件各細則が公序良俗に違反するか。(争点(5))
(原告の主張)
以下の理由から,本件各細則は,公序良俗に反し,無効である。
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ア
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38期細則は,駐車場を使用できる車両を「乗用車又は貨物兼用乗用車」(2条2項)と規定しており,同細則は,原告の使用する軽トラックを排除しようとする不当な動機によって制定されたものである。39期細則には,38期細則のような車種制限はなくなったものの,39期細則の附則には,38期細則を廃止する旨の規定がないから,38期細則も未だ有効で,二つの細則が生きている二重細則となっている。このように,本件各細則は,いずれも上記のとおり不当な動機によって制定されたものである。
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イ
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本件各細則は,リゾート利用者の駐車場利用を無償とするのに対し,居住者の駐車場利用には2000円の負担を負わせることを内容とするものであって,リゾート利用者に2000円相当の利益を与え,賛成するよう誘導してリゾート利用者の賛成により承認されたものである。
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ウ
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39期細則には,次のような矛盾や規約違反があり,公序良俗に反する。 38期細則も同様である。
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@
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39期細則2条は,区分所有権を有しない「居住者」も駐車場を使用することができる旨規定しているにもかかわらず,同細則5条には,区分所有権を有しない者は駐車場利用の申込みをすることができないと規定されており,矛盾がある。
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A
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39期細則14条2号は,区分所有権を有しない者が駐車場を使用することを禁止しており,区分所有権を有しない「居住者」も駐主場を使用することができるとする同細則2条と矛盾する。
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B
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旧使用細則2条13号と39期細則2条も矛盾する。
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C
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管理規約16条2項は,第三者に使用させることができる共用部分から駐車場を除外しており,この第三者とは区分所有権を有していない者を意味するから,39期細則2条は管理規約16条2項に反する。
(被告の主張)
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ア
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38条細則は,軽トラックの使用を禁じておらず,原告を排除する意図はないし,同細則は,施行される前に39期細則に改定されたため,38
期細則の効力は発生していない。
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イ
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リゾート利用者と居住者の間には,駐車場の使用頻度に明らかな差があり,駐車場利用によって受ける利益に応じて使用料の負担を定めることには合理性があるから,本件各細則は公序良俗に反しない。
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ウ
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以下のとおり,39期細則に原告が主張するような矛盾や管理規約との抵触はない。
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@
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39期細則5条は,申込手続の簡明化のため,駐車場使用の申込みを行う者を区分所有者に限定したにすぎず,本件駐車場の使用者を区分所有者のみに限定する趣旨ではない。
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A
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39期細則14条2号の「第三者」は,組合員又は居佐者以外の者を意味する。
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B
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旧使用細則2条13号は,「駐車場使用者」についての定義規定であるが,39期細則の各規定でこれを適用ないし準用する条項はなく,両者は関係がない。
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C
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管理規約15条が駐車場の使用について全て細則に委任しており,管理規約16条2項は駐車場には適用されない。
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1
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現在施行されている39期細則について検討する。
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(1)
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細則によって本件駐車場を有料化することは,区分所有法30条1項に違反するか。(争点(1))
区分所有法30条1項は,「建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は,この法律に定めるもののほか,規約で定めることができる。」としており,これは,区分所有者相互問の事項について広く規約で定めることを認め,区分所有者の団体による私的自治を認めた規定である。
そして,敷地内での駐車場の使用は,上記の区分所有者相互間の事項に該当するから,規約で定めることができる。
本件において,管理規約15条は,「区分所有者は,管理組合法人が管理する駐車場…の使用について,別に定める使用細則の定めるところにより,使用することができる。」としており(第2, 2(3)) ,駐車場の使用については,使用細則で定めることとしている。
区分所有法30条1項が定める規約事項は,いわゆる任意的規約事項であって,もっばら規約によって定めることのみが認められる必要的規約事項ではないから,規約において,別に定める使用細則の定めるところによるとして,使用細則に委任することは許容されると解される。
したがって,細則によって本件駐車場を有料化することは,区分所有法30条1項に反するものではなく,39期決議が区分所有法30条1項に反するとの原告の主張は採用できない。
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(2)
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本件駐車場の使用料が区分所有法19条の「共用部分の負担」に該当し,使用頻度によって本件駐車場の料金を有料と無料に分けることは,同条に違反するか。(争点(2))
本件駐車場は,区分所有法21条にいう「建物の敷地又は共用部分以外の附属施設」で「区分所有者の共有に属する場合」に当たり,同法19条が準用されるところ,その使用料が同条にいう「共用部分の負担」に当たるかについて検討する。
この条項は,共用部分については,管理のための費用その他の負担が生じることもあるし,そこから利益を生じることもあることから,こうした共用部分の負担及び利益の帰属について定めた規定である。
そうすると,同条項にいう「共用部分の負担」 とは,共用部分に当たる部分の保存・管理などに伴い発生する費用及び租税等の負担,すなわち,通常管理費として観念される債務をいうものと解するのが相当である。
駐車場の使用料は,駐車場を使用することにより生じるものであって,保存・管理などにより生じる費用や租税等の負担に当たるとはいえないから,「共用部分の負担」には当たらず,規約に別段の定めがなかったとしても,持分の割合に応じて負担に任じることになるものではない。
以上によれば,39期決議が区分所有法19条に反するとの原告の主張は採用できない。また,管理規約25条2項は,同条1項に規定された管理費及び修繕積立金の額について定めたものであるところ,本件駐車場の使用料はこれに当たらないから,39期決議は管理規約25条2項に反するものではない。
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(3)
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本件駐車場を有料化する細則の変更が,原告の権利に「特別の影響を及ぼすべきとき」(区分所有法31条1項後段)に該当し,原告の承諾が必要となるか。(争点(3))
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ア
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本件では,細則の変更により,従前無料であった本件駐車場の利用が一部有料化されたものであるから,「規約の設定,変更又は廃止」(区分所有法31条1項前段)には当たらない。
しかし,同法31条1項後段が,多数者の意思によって少数者の権利が制限又は否定されるという結果が生じる場合に,少数者の権利の保護の観点から,「特別の影響を及ぼすべきとき」には,当該少数者の承諾を要するとしていることに鑑みると,細則の定めにより少数者の権利を制限又は否定する場合には,当該少数者の権利の保護の観点から,同項後段を類推適用し,区分所有者間の利害を調整するのが相当である(最高裁平成10年10月30日第二小法廷判決・民集52巻7号1604頁参照)。
そして,「特別の影響を及ぼすべきとき」に当たるかは,細則の設定,変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し,当該区分所有関係の実態に照らして,その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいうものと解される。
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イ
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そこで,以下,本件について検討する。
前記前提事実に加え、争いのない事実,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
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(ア)
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本件駐車場の有料化に至る経緯
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a
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本件マンションの区分所有者は,リゾート利用者と居住者に分かれるところ,居住者の増加に伴い,土日祝日には駐車場が満杯となるなどの問題が発生し,本件マンションの居住者から,本件駐車場の使用方法の見直し,駐車スペースの確保等の要望が寄せられるようになった。そこで,被告は,第35期通常総会議案書の第3号議案の提案に当たり,駐車スペースの確保,駐車場利用の有料化等について検討を継続する旨を第3号議案の「1. 現状と提案理由」欄に記載した(乙 4)。
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b
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被告は,平成26年4月,駐車場の使用料金,駐車場増設などに関するアンケートを実施し,376戸中203戸から回答を得たところ,駐車場使用料金についての回答数は230であった。被告は,その結果を第37期通常総会議案書に添付した。(乙5・29頁,乙13・1頁)
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c
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被告は,第38回通常総会において,第3号議案として38期細則を提案し,その提案理由として,組合員全戸に1台の駐車スペースがない中で,駐車場利用の公平性を保つ必要がある旨説明し,第3号議案は可決された。(第2の2(4)イ,乙6)
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d
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第38期通常総会において,有料駐車場の駐車場所を固定化してほしいなどの要望が出されたことから,被告は,第39期臨時総会議案書の第1号議案において,有料駐車場の駐車場所を先着自由選択制から固定制に変更するなどの改定を提案し,可決された。(乙7)
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(イ)
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本件駐車場使用料の設定根拠
被告の理事会は,本件駐車場の近隣にあるマンションの駐車場や月極めの駐車場(5か所)の使用料が月額3200円〜5292円(乙14)
であったこと及び従来は本件駐車場を無料で使用することができたことなどを考慮し,本件駐車場の使用料を相場よりも安い月額2000円と定めた。(乙10・6〜7頁)。
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(ウ)
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本件駐車場使用料の使途
被告は,本件マンション敷地外に新たに駐車場を賃借し,26台分の駐車スペースを確保しており,本件駐車場の使用料は,この賃貸駐車場の賃借料にあてられている。その結果,本件駐車場は合計129台分確保され,そのうちの有料駐車場は78台分となった。(乙12の1・2, 弁論の全趣旨)
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ウ
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原告を含む居住者が受ける不利益
細則の変更により,本件駐車場を月に16 日以上使用する居住者は,従前は無料で本件駐車場を使用していたところ,本件駐車場の使用料として月額2000円を支払うという不利益を受けることとなる。
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エ
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細則変更の必要性及び合理性
上記認定のとおり,第35期通常総会よりも以前から,居住者の増加に伴い,本件駐車場が満杯となるなどの問題が発生しており,本件駐車場を有料化してその収益を本件マンションの敷地外に駐車場を借りる費用に充当することによって駐車場を確保する必要性があったものと認められる。
原告は,駐車場使用料金についてのアンケートに対する回答数が230となっており,回答した203戸を27上回っていることから,27名の不正使用者がおり,それらの車両を排除すれば足りると主張するが,上記のアンケート結果については,複数の選択肢を選んだ区分所有者がいたために生じたものと推測され,これを不正利用者による回答とみるべき根拠はなく,他に不正使用者が27名いることを認めるに足りる証拠もない。
したがって,不正使用者をすべて排除すれば本件マンションの居住者及びリゾート利用者にとって必要な駐車場がすべて確保できると認めることはできず,駐車場確保の必要性を欠くとはいえない。
また,本件駐車場の使用頻度の低いリゾート利用者と,日常的に駐車場を使用する居住者とでは,本件駐車場の使用によって受ける利益の程度が異なること及び本件駐車場の使用料は近隣の駐車場使用料の相場の半額程度とされており,過大な負担を負わせるものではないことからすると,使用頻度の高い居住者に上記の負担を負わせることには合理性があるといえる。
したがって,本件における細則の変更には,必要性及び合理性が認められる。
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オ
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以上を総合すると,細則変更の必要性及び合理性が認められ,原告を含む居住者である一部の区分所有者が受ける不利益が受忍すべき限度を超えると認めることはできないから,「特別の影響を及ぼすべきとき」(区分所有法31条1項後段)に当たらず,区分所有法31条1項後段は類推適用されないものと解するのが相当である。
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(4)
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39期細則の固有の無効事由の有無(争点(4))
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ア
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原告は,本件駐車場を有料部分と無料部分に分けることが,共用部分の効用の著しい変更に当たり,組合員総数及び議決権総数の4分の3以上の賛成が必要となる旨主張する。
管理規約47条3項2号の「共用部分等」は,共用部分及び附属施設をいい(管理規約2条7号),本件駐車場は,附属施設に当たる(管理規約別表第1)から,本件駐車場を有料部分と無料部分に分けることが,「効用の著しい変更」に当たる場合には,管理規約47条3項2号の適用を受けるところ,「効用の変更J とは,当該部分の機能や用途を変更することをいい,それが「著しい変更」に当たるかは,変更を加える箇所及び範囲,変更の態様及び程度を勘案して判断すべきである。
39期細則は,本件駐車場を有料部分と無料部分に分け,有料部分を固定制とする等の変更をするにとどまり,本件駐車場を駐車スペースとして用いるという点では変わりがないから,機能や用途に変更があるとはいえない。したがって,39期細則により,本件駐車場の機能や用途の著しい変更があるとは認められず,普通決議によって39期細則を制定することができるものということができる。
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イ
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原告は,議決権や委任状等の開示を拒否されたことを理由として39期細則が無効であるとも主張する。
その趣旨は必ずしも明らかではないが,区分所有法や管理規約には,被告に対して上記事項を原告に開示することを義務付ける規定はなく,それらが開示されなかったことをもって,39期細則に無効事由があるといえない。
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ウ
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原告は,39期決議が一事不再議に反すると主張する。
しかし,区分所有法や管理規約には,一事不再議についての規定はなく,また,38期細則と39期細則とではその内容も異なるから,39期決議がいわゆる一事不再議の原則に反するともいえず,原告の上記主張は採用できない。
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(5)
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39期細則が公序良俗に反するか。(争点(5))
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ア
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原告は,39期細則の決議において,リゾート利用者に利益を与えて賛成するよう誘導して決議されたものである旨主張するが,上記のとおり,本件駐車場の使用頻度の高い者に使用料を負担させることには合理性があり,リゾート利用者を優遇していることが,公序良俗に反するとはいえない。
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イ
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原告は、39期細則が公序良俗に反する理由として,第2, 4(5)(原告の主張)ウのとおり,39期細則の条項間に矛盾があり,管理規約にも反する旨主張する。
しかし,以下のとおり,いずれも採用できない。
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@
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39期細則3条は,駐車場使用の申込みができる者を区分所有権を有するものに限るとする規定であり,組合員でない居住者も本件駐車場を使用することができるとする規定と矛盾しない。
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A
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39期細則14条2号の「第三者」は,本件駐車場の使用を許可された組合員及び居住者以外の者を指すと解される。
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B
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旧使用細則2条13号は,旧使用細則における用語の定義規定にすぎず,旧使用細則の「第5章 駐車場の使用」等の本件駐車場に関する規定が39期細則によって廃止されたことにより,旧使用細則2条13号の定義規定も不要となったとはいえるが,39期細則で旧使用細則2条13号を適用ないし準用しているわけではないから,旧使用細則2条13号39期細則に矛盾があるとはいえない。
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C
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管理規約16条2項において敷地及び共用部分等から駐車場が除かれているのは,駐車場の使用については,管理規約15条で規定され,使用細則の定めるところによるとされているからである。
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(6)
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原告は,以上のほかにも,39期細則が無効であるとして,るる主張するが,39期細則が無効であるとすると認定判断するに足りる的確な主張立証はない。
以上によれば,39期細則が無効であるとは認められない。
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2
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38期細則について検討する。
原告は,38期細則についての無効確認も請求し,39期細則の附則には,38期細則を廃止する規定がないから,二つの細則が生きている二重細則となっているとし,38期細則は本件駐車場を利用できる自動車から原告の使用する軽トラックを排除しており,公序良俗に反し無効であるなどと主張する。
しかしながら,38期細則が施行される前に39期細則が成立し,施行されたことにより,38期細則が施行されることはなかったものであり,39期細則の附則において,旧使用細則の
「第5章 駐車場の使用」等の本件駐車場の利用に関する規定を廃止するとされ,38期細則を廃止するとされていないのは,38期細則が施行されておらず,その廃止を問題にする余地がなかったからである。38期細則が現在効力を有しないことは当事者間に争いがなく,38期細則は現在の原告と被告との間における本件駐車場についての権利関係に何ら影響を及ぼしていない。そして,上記のとおり,39期細則は有効であるから,39期細則が施行されたことによって施行されることがなかった38期細則の効カが現在問題となる余地はない。
したがって,38期細則が無効であることの確認を求める原告の訴えは,確認の利益を欠き,不適法である。
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3
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結論
よって,38期細則が無効であることの確認を求める原告の訴えは不適法であるから,これを却下し,39期細則が無効であることの確認を求める原告の請求は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
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