平成28年(ネ)第4989号 駐車場利用細則無劾確認請求控訴事件

控訴人(一審原告) 若林昭夫

被控訴人(一審被告) 春日居ライフピアマンション管理組合法人

控 訴 答 弁 書

平成29年1月11日 

東京高等裁判所第17民事部ハ係 御中

〒400−0032山梨県甲府市中央一丁目8番6号今井ビル3階 

丸山公夫法律事務所(送達場所)      

被控訴人訴訟代理人弁護士 丸 山 公 夫  

同 訴訟代理人弁護士 前 田 直 哉 

TEL 055−235−1731      

FAX 055−235−1759      

第1 控訴の趣旨に対する答弁

 1 本件控訴を棄却する。

 2 控訴費用は控訴人の負担とする。

との判決を求める。


第2 控訴理由に対する反論

 控訴理由書「第1 原審事案の概略と争点」について

 本件の事案の概略及び争点は、原判決「第2事案の概要」の「第1項事案の要旨、第2項前提事実、第3項争点」の通りである。控訴人は、控訴理由書第11項で、春日居ライフピアマンション (以下「本件マンション」という。)の駐車場の有料化に関して、第38期通常総会及び第39期第1回臨時総会で決議された各駐車場利用細則を、不公平で不正なものであると主張するが、これは誤りである。なお、第38期通常総会で決議された細則を、以下「38期細則」といい、第39期第1回臨時総会で決議された細則を以下「39期細則」という。

 控訴理由書「第2 原審の判断要旨」は、概ね原判決「第3 当裁判所の判断」を要約したものであるが、正確には原判決のとおりである。

3

 控訴理由書「第3 控訴人(一審原告) の主張」について

(1)

 控訴理由書第31項に対する認否反論

 控訴人は、控訴理由書第31項で、原判決に審理不尽、事実誤認、日本語解釈、論理法則適用、法律及び規約・細則の解釈適用に重大な誤りがあると主張するが、控訴人のこれらの主張は誤りであり、否認ないし争う。

(2)

 控訴理由書第32項に対する認否反論

 控訴理由書第32(1) について否認ないし争う。

 控訴人は、控訴理由書第32項で、原判決第32項の訴え却下部分について事実誤認、審理不尽を主張するが、原判決には事実誤認、審理不尽はない。
 原判決が述べるとおり、38期細則の施行前に39期細則が有効に成立・施行されたことにより38期細則が施行されることがなかったため、38期細則の効力が現在問題となる余地はない。したがって、38期細則が無効であることの確認を求める訴えは訴えの利益がなく不適法であるため、訴え却下とした原判決は妥当である。

 また、控訴人は控訴理由書第32(1) 39期細則が有効であるためには、38期細則が有効でなければならないとするが、この考え方は誤りである。控訴人の考え方では、改正前の法規範が無効である場合に、改正で当該法規範を有効とすることはできないことになる。しかし、無効な法規範が改正により有効になることは通常ありうるからである。
 本件の場合、39期細則は、38期細則を改正したものであるが、39期細則の有効性は、39期細則の内容及び第39期第1回臨時総会での決議手続きが有効であれば認められるため、38期細則の有効性は問題にはならない。

 控訴理由書第32(2) について否認ないし争う。

 控訴人は、控訴理由書第32(2) 柱書及びアで、38期細則が無効であることを主張するが、前述の通り38期細則の有効性は39期細則の有効性と関係がない。したがって、控訴人の主張は誤りである。

 控訴人は、控訴理由書第32(2) イで、原判決が平成2811日の前に39期細則が施行されたと主張するが、これは誤りである。なぜなら、原判決は、39期細則が平成27118日に成立し、その附則で平成2811日から施行されるものとされ、同日から施行されたと認定している (原判決第22項前提事実 (4) )からである。また、控訴人は甲8が、「平成271116日に施行したと宣言している」と主張するが、これは誤りである。甲8にはそのような宣言はない。

 控訴人は、控訴理由書第32(2) ウで、甲639期細則の提案理由に、甲438期細則の21頁下部の駐車場利用規則は廃止するとの文言があることをとらえ、これを38期細則の本体を廃止しないとの宣言であると主張するがこれは誤りである。第39期第1回臨時総会議案書 (7) 1頁の「臨時総会の開催について」に記載されているとおり、被控訴人は、38期細則の見直しを行い39期細則に変更して施行することを上程している。これは、文理上明らかに38期細則を改正し39期細則のみを有効とすることを目的としている上程に他ならない。したがって、控訴人の主張は誤りである。なお、同議案書2頁の「また、第38期通常総会議案書21ページの「駐車場利用規則」は、今回の「駐車場利用細則」に統合しましたので、廃止とさせていただきます。」との記載は、38期細則に付随する「駐車場利用規則」が39条細則の成立により効力が発生しないことを説明しただけであり、38期細則の本体を廃止しないとするものではない。

 控訴人は、控訴理由書第32(2)エで、38期細則の終期が規定されていないので現在も38期細則が有効であると述べるが、これは誤りである。39期細則の成立、施行によって38期細則が無効となったことは、明らかである。

 控訴人は、控訴理由書第32(2) オで、38期細則が現在の控訴人被控訴人の間における本件駐車場についての権利関係に影響があると主張するがこれは誤りである。なぜなら、39期細則が施行され、現在無効となった38期細則が、現在の控訴人被控訴人間の権利関係に影響を生じさせることは不可能だからである。
 なお、現在、居住者については、希望者全員が駐車場を使用できる状態になっている。

(3)

 控訴理由書第33(1)について否認ないし争う。

 控訴人は、建物の区分所有等に関する法律 (以下「区分所有法」という。)301項が、もっぱら規約によって定めることのみが認められる必要的規約事項であると主張するが、これは誤りである。

 原判決が述べるとおり、区分所有法301項が定める規約事項は、文理上及び同項の趣旨である区分所有者相互間の事項について広く規約で定めることを認め区分所有者の団体による私的自治を認める点からすると、規約以外の方法によって定めることが許される任意的規約事項であることは明らかである。したがって、規約において使用細則に委任することは、同項に反しない。

 したがって、細則によって本件駐車場を有料化することは同項に違反せず、3 9期細則が同項に反するという控訴人の主張は誤りである。

(4)

 控訴理由書第33(2)について否認ないし争う。

 控訴人は、本件駐車場料金が、区分所有法19条の「共用部分の負担」に該当すると主張するが、これは誤りである。

 原判決が述べるとおり、「共用部分の負担」とは、共用部分に当たる部分の保存・管理などに伴い発生する費用及び租税等の負担、すなわち、通常、管理費として観念されるものである。したがって、駐車場使用料は、駐車場の使用によって生じる負担であり保存管理などにより生じる費用や租税等の負担には当たらないので、「共用部分の負担」に当たらない。
 なお、控訴人は、「共用部分の負担」には当たらないとの原審の判断は、当事者の申立てのない事項だと述べるが、これは誤りである。「共用部分の負担」の該当性については、控訴人自身から指摘されており、原審は、法の解釈適用を行った結果、該当しないと判断したのであり、何ら不当性はない。

 したがって、原判決に誤りはない。

(5)

 控訴理由書第33(3)について、否認ないし争う。

 控訴人は、本件39期決議について、区分所有法311項前段の類推適用を認めた上で、本件が区分所有法311項後段の「特別の影響を及ぼすとき」に当たるとして、原判決が誤りであると主張するが、本件は「特別の影響を及ぼすとき」に当たらないため、控訴人の主張は誤りである。

 原判決が述べるとおり、「特別の影響を及ぼすとき」に当たるか否かは、細則の設定変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、当該区分所有関係の実態に照らして、その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいう。

 本件の場合、平成248月以前から居住者の増加により駐車場不足が問題となっていたことから、本件駐車場を有料化してその収益を本件マンションの敷地外に駐車場を借りる費用に充当することで駐車場を確保する必要性があった。
 さらに、本件駐車場の使用頻度の低いリゾート利用者と、日常的に駐車場を使用する居住者とでは、本件駐車場の使用によって受ける利益の程度が異なること及び本件駐車場の使用料は近隣駐車場の相場の半額程度である2000円であり、過大な負担を負わせるものではないことからすると、使用頻度の高い居住者に上記負担を負わせることには合理性がある。
 したがって、本件細則変更について、必要性及び合理性が認められ、原告を含む居住者である一部の区分所有者が受ける不利益が受忍すべき限度を超えると認めることができない。
 よって、本件細則変更は、区分所有法311項後段の「特別の影響を及ぼすべきとき」に当たらず、原判決が区分所有法311項後段の類推適用はされないとしたことは、相当であり事実誤認はない。

 これに対し、控訴人は、控訴理由書第33(3)イで、居住者は100で居住者分が78であるため、少なくとも22が水増しであり、水増しの確認なく控訴人の主張を退けた原審の判断は事実誤認があると述べる。控訴人が何をもって22が「水増し」であると主張するのかは不明であるが、居住者のうち当時の駐車場使用希望者が78名であったということであり、何ら「水増し」はない。
 また、控訴人は、控訴理由書第33項(3)ワで、居住者の不利益は月額2000円ではなく最大17000円であると主張するがこれは誤りである。居住者が月額2000円であり、リゾート利用者が無料であることから、両者の差は2000円である。控訴人は、リゾート利用者は、一日辺り1000円最大15日で15000円の利益があると言うが、もしそうであれば、居住者は、30日で3万円負担すべきところを2000円しか負担しておらず、28000円の利益があることになる。この場合、むしろリゾート利用者が差し引き11000円の不利益を負うことになる。しかし、この結論が通常の感覚とずれるのは、控訴人の比較方法が相当でないからである。
 また、控訴人は、控訴理由書第33(3)エで、被控訴人が平成264月に実施したアンケート結果 (529) について、様々な推測を重ねながら、27名の不正な駐車場使用者を排除すれば駐車場不足を解消できると述べるが、これは誤りである。被控訴人は、平成264月に、区分所有者376戸に対し、アンケートを実施したところ、203戸からの回答を得た。そのうち、駐車場の有料化の質問については、二重回答を含めて230の回答があった。したがって、230から203を差し引いた27は単こ二重回答の数に過ぎず、不正利用者の数ではない。また、控訴人は、平成26年当時、理事会の許可を得れば2台目の駐車が可能だったのは不当であると述べているが、当時の「春日居ライフピアマンションの使用及び共同生活の秩序維持に関する細則」(2、以下「旧使用細則」という。) では複数台の駐車を禁止していなかったため、理事会の許可により2 台目の駐車が可能であった。そして、旧使用細則は、春日居ライフピアマンション管理規約 (1、以下「規約」という。) 162項には反しない。なぜなら、規約162項は、総会の決議によって共用部分等の一部について第三者の使用を認めているが、駐車場にはこれを適用せず、規約15条により細則に委任しているからである。
 また、控訴人は、控訴理由書第33項(3)オで、39期細則は、居住者が毎月2000円の駐車料金を負担することは、居住者とリゾート利用者との間の公平性を欠くと主張するが、これは誤りである。控訴人は、全てを無料にして駐車場不足を放置すべきとしているのか、リゾート利用者に居住者と同じ負担をせよと主張しているのか不明であるが、いずれも相当性を欠く主張である。駐車場不足の原因は、控訴人が主張するような不当な利用者の存在ではなく、区分所有者に対する駐車場数の不足によるものであり、駐車場の利用頻度に応じて駐車料金を設定することで駐車場不足を解消することに合理性があり受忍限度を超えないものであることは、原判決が述べている通りである。
 したがって、控訴人の主張は誤りである。

(6)

 控訴理由書第33(4) について、否認ないし争う。

 控訴人は、控訴理由書第33(4)アで39期細則による変更は、規約4732号の「共用部分等の効用の著しい変更」に当たり、普通決議で議決した39期細則は同規約に反し無効であると述べる。
 原判決が述べるとおり、「効用の変更」とは、当該部分の機能や用途を変更することをいい、「著しい変更」に当たるかは変更を加える箇所及び範囲、変更の態様及び程度を勘案して判断すべきである。
 そして、39期細則は、本件駐車場を有料部分と無料部分に分け、有料部分を固定制とする等の変更をするにとどまり、本件駐車場を駐車スペースとして用いるという点では変わりがないから、機能や用途に変更があるとはいえない。したがって、39期細則への変更は「共用部分等の効用の著しい変更」には当たらず、普通決議によって39期細則を制定することは規約4732号に違反せず有効である。

 控訴人は、控訴理由書第33(4) イで議決権行使書や委任状の開示を拒否した39期細則の決議は無効であると述べるがこれは誤りである。
 原判決でも述べるとおり、区分所有法や規約には、被控訴人に上記事項の開示を義務付ける規定がないため、不開示を理由に39期細則が無効になることはない。

(7)

 控訴理由書第33(5) について、否認ないし争う。

 控訴人は、控訴理由書第33(5) アで、39期細則の決議は「リゾート利用者に無料という絶大な利益を与え、駐車場不足の原因を全て居住区分所有者に転嫁したことによるものであり公序良俗に反する決議である」と述べ、「本件駐車場有料化は区分所有者の要望ではなく、被控訴人代表者や賃貸事業者の利益のために議案提出し、可決を強要したものであり公序良俗に反する。」と述べるが、これはいずれも誤りである。原判決が述べるとおり、本件駐車場の使用頻度の高い者に使用料を負担させ、使用頻度の低いリゾート利用者を無料とすることには合理性があり、リゾート利用者に「絶大な利益」を与えたものではない。また、39期細則の決議は適正に行われており、被控訴人代表者等が強要をした事実はない。

 控訴人は、控訴理由書第33(5) イで、39期細則の条項間に矛盾があり規約にも反すると主張するがこれは誤りである。

 39期細則5条は、駐車場使用の申込みができる者について、区分所有権を有するものに限るとする規定で、組合員でない居住者も本件駐車場を使用することができるとする39期細則2条と矛盾しない。
 また、控訴人は、規約15条は区分所有者以外の占有者の駐車場使用を認めない趣旨であると述べるが、これは誤りである。規約15条は、区分所有者の使用を細則に委ねる規定であり、39期細則2条は、区分所有者が直接使用する場合のみならず、第三者である占有者を通じた間接的使用も認めたものである。このように、区分所有者が占有者を通じた間接的使用をすることを認めているのは、規約162項で駐車場についての第三者の使用を制限しなかったことからも明らかである。したがって、規約15条と39期細則2条は矛盾しない。
 さらに、控訴人は、区分所有者以外の居住者が駐車場を使用することが駐車場不足の原因であると述べるが、これは誤りである。本件マンションの駐車場不足は、区分所有者数に対する駐車場の数が少ないことによつて生じているのである。また、控訴人は、39期細則が区分所有者で専有部分を賃貸している者に対して駐車場確保の負担をなくす利益を与えていると述べるが、これは誤りである。なぜなら、区分所有者で専有部分を賃貸している者も駐車料金を支払っており、駐車場確保の負担を負っているからである。
 したがって、区分所有者以外の居住者が本件駐車場を使用することは、規約や39期細則に反せず、何ら公序良俗に反しない。

 控訴人は、39期細則142号の「第三者」は、区分所有者以外の者であると主張する。しかし、39期細則2条から、39期細則142号の「第三者」が本件駐車場の使用を許可された組合員及び居住者以外の者を指すことは、明らかである。したがって、控訴人の主張は誤りである。

 控訴人は、39期細則は、旧使用細則 (2) 5章の内容が変わっただけであり、旧使用細則213号が39期細則に適用されるため両者に矛盾が生ずると主張するが、これは誤りである。なぜなら、旧使用細則2条は、旧使用細則における定義規定であるため、旧使用細則とは別の39期細則」には適用されないからである。また、原判決でも述べているとおり、39期細則には、旧使用細則213号を適用ないし準用する規定もない。したがって、39期細則と旧使用細則は矛盾しない。

 控訴人は、規約162項が第三者の駐車場使用を禁ずる規定であるとした上で、39期細則がこれと矛盾し無効であると主張するが、これは誤りである。原判決が述べるとおり、規約162項において敷地及び共用部分等から駐車場が除かれているのは、駐車場の使用については、規約15条で規定され、使用細則の定めるところによるとされているからである。なお、規約162項で駐車場と同様に除かれている専用使用部分については、規約142項で第三者の使用を認めている。

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 控訴理由書第34項については否認ないし争う。

 控訴人の主張は不明確であるが、39期細則は、区分所有法及び規約に合致した手続きで制定されており、無効となる理由はない。したがって、控訴人の主張は誤りである。

第3 結 論

   上記のとおりであるから、本件控訴は棄却されるべきである。



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